梯子
「チェックインしておいて」
兄は私をホテルの前で降ろし、提携駐車場へ向かった。
すぐ戻ってくるかと思い扉の前でスマホの画面をつけたり消したりを繰り返す。
なかなか戻って来ない。私は一人でホテルに入る。
料金は支払い済みだった。名前を書くだけで手続きは済んだ。フロントのスタッフが私に部屋の鍵を手渡したところで、兄が鍵を指で回しながら戻ってきた。
「行くぞ」
エレベーターの方へと歩く。その後に続く。鍵を渡してくれたフロントのスタッフがこちらを見ながら微笑んでいる。兄妹ではなく若い夫婦だと思われたのかも知れない。もっとも、私は未成年なのでその方が穏便である。
部屋に入る。狭い。
扉を開けて、ぱっと見えたスペースが部屋の全てだった。浴室はあるが、それ以外に何も無い。ベッドは浴室の上に乗っており、梯子で上がれるようになっている。
一人でも狭く、二人ではあまりにも狭い。
兄は部屋の中をぐるりと見回す。
「ラブホの方がまだマシだな」
「ラブホなんて来たことないでしょ」
「ないよ」
兄は梯子を登り、一人でベッドに寝転がる。
「俺には縁の無い場所だよ」
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