滑走


 両親には私から連絡を入れた。

 

 時刻は二十二時を回り、日はとっくに沈んだ。無造作に車のライトをつける兄。

 大きく右折して幹線道路に出る。法定速度より少し早いくらいまで加速した。

 

「明日の授業は」

「大丈夫だよ」


 兄は大学では成績が悪い方だった。

 それでも、私の中の兄は賢い人だった。

 ――賢い、という言葉は不適切だ。兄は、聡い人だった。

 

 兄は大学の四年生だった。授業を休むの余裕があるのか疑問に思ったが、考えるのをやめた。

 高揚感。

 

「どこに行く?」

「どこでも」

「そればっかり」


 まるで同じ流れだ。

 赤信号で停止する。

 車のナビを操作し始める兄。

 

 行き先は、展望台。空港のそばにある施設だった。

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