時間


 高速道路に乗れば、水族館まで三十分。

 下道で一時間。高速代は七百十円。二人の三十分は、それに足るだろうか。兄は何も言わず、高速道路を避けた。


 水族館に到着する。

 

「車の後ろ見てようか」

「別にいい」

 

 それほど広くない駐車場。熟れた様子で、兄は車を停めた。免許を取ってから一年ほどしか経っていない。

 たぶん兄は、運転が上手かった。

 車を降り、バッグを肩からかける。しかし、一向に兄が降りてくる気配がなかった。

 

「どうしたの」

「俺はここで待ってる」

 

 確かにここを希望したのは私だ。

 

 私は兄を置いて建物へ向かう。

 周囲を見渡すと、家族連れやカップルが目に付いた。

 振り返る。手を振っても兄からは見えない。

 スマホを取り出し、メッセージを送った。

 

 少し待つと、兄が小走りで追いかけてきた。


「ちゃんと車の鍵かけた?」


 兄はまた小走りで車の方へ戻っていった。彼女の一人もできないわけである。

 すぐに戻ってきた。鍵はかかっていた。

 

 水族館の入場料は、一人二千円。兄がクーポンを持っていたので、二人で二千円になった。


「あるなら先に渡してくれたらよかったのに」

「さっきそこで拾った」

「そういうところだよ」

「知ってる」

 

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