第2話 笑った鬼とお正月

「店が狭くなるのにこんなに呼んで!」

「こら、キリュー!お客様になんてこというの」

「だって!」

「はは、吸血鬼だった面影もないね。みんなも」


 魔法ではなく自力で集合した元モンスター達。人間に化けて暮らしていたが、ある日突然人間になった。帰る場所のなくなった彼らにとって、ここはふるさとの代わりなのだ。人であって人のいいこの店のマスターが、今日はおしるこやらお雑煮出すもんだから、賑やか。初もうでも済んでいる。


「一番心配だったのは小鬼たちだよ、みんなだいたい生き生きしてるね」


「メグちゃん!うちの会社ブラックなの!」

「うち、家族ができるよ」

「あたし女優やってる」


「そんなとこ辞めちまいな!家族ね、よかったねぇ。あんたもテレビでみてるよ。そういやあんたらまとめて芸能事務所にだしたのに、一人しか残んなかったの?」

「だって大変だったし」

「難しかったし」

「私はこれしかできないから」


 すこし成長した元小鬼達は、メグと呼ばれる元魔女に口々に言う。みな20代半ばくらいだ。初めは誰かわからなかった。マスターが眩しそうに目を細めて言う。


「元々元気に笑ってたけどいろんな顔するようになったね、みんな。キリューも含めてね」

「ほんと!鬼は生まれ変わったら笑うものなのかね」


「私、ドラマでクールな役をするのに吸血鬼さんを参考にしてて」

「そうだったのか!?」

「ええ、もう終わったドラマですけど」

「それ知ってる」


「「「暗闇の美女」」」

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