第3話 年明けこそ鬼笑う
年明け、俺は異世界にいた。本当なら寝正月でこたつにいるはずの俺は、なにやら硬い石の台の上にいる。頭の中でとっさに浮かんだのは、これは夢だ、寝ぼけているだけだと、早く覚めろよ。リアルで寒い。石の冷たい感触、あたたかいぬくぬくの布団の感触が全くない。寝返りすると体が痛い。起きた。視界は真っ赤だった。寝ぼけてるなあ、むくりと体を起こすと大きな赤鬼が。目の前にいた。楽しそうにやにやしており、あぐらをかいていて、俺を覗き込んでいる。悲鳴をあげようした口が、大きな手で塞がれた。カサカサでごつごつしている。
「さわぐな」
物騒な台詞なのに顔は笑っていて、日本語だから日本の鬼だな、なんて場違いなことが頭に浮かぶ。目が怒ってることもなく、優しく閉じていた。それでも牙や爪やからだの大きさが人間じゃなくて、怖くて。カタカタ震えだした。情けねぇな俺。
「おれはおにだ」
わかってるよ、知ってる。子どもでも知ってるだろ。声が出せないから頷いた。俺の様子に満足したようにガハハと笑い、俺の口から手を離してガラガラ声で歌うように、
「おれはお前がきてうれしい」
一人でここにいて寂しいと話す、でもどこか楽しそう。
「なにしてあそぶ?」
突然言われ、子どもの頃の記憶がフラッシュバックして、俺は鬼がでてくる遊びしか浮かんでこなくかった。鬼ごっこ、色鬼、高鬼、かくれんぼ、だるまさんが転んだ、缶けり、ケイドロは違うか。
「もうおとなだもんな」
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