第4話 初夢にて鬼笑う
「酒をのもう」
そう聞き取れるが、目の前に出されたモノは濁りすぎていて牛乳のように見える。
「俺、酒のめないです」
苦し紛れに伝えるが機嫌を悪くした様子もない。岩場に積み上げられた瓶のひとつから何か液体を注ぐ。注いでいる先もグラスじゃなくて割った瓶の底だ。普通に口きりそうなんだけど。透明な液体だ。鬼ってジュース飲まないよね多分。俺は後悔した。水であってくれと匂いを嗅いだりする。サビ臭い?
笑顔で酒を持っている赤鬼と乾杯をした。ぐびっと一気飲みをする赤鬼を見ながら、うまそうに飲むなあとおもいつつ、黄色い瞳と目があって、微笑まれて、
「いただきます」
飲むぞ!と決意したところで目が覚めた。
石の壁だと思っていたのは窓で、こたつが暑くて逃げてきたようだった。透明の液体は結露だった。窓の外には雪が積もっていて、赤いものは何も……ああ自分の口がぼやぼやと形を歪めてうつっていた。
これ、初夢だぞ?
一富士二鷹三茄子はどうしたんだよ。俺は怖くなって夢診断を始める。
スマホをパタンと閉じて俺は二度寝を決め込んだ。子どもの頃の鬼ごっこやら色鬼が頭をかけめぐる。あとかくれんぼか。追いかけられて、色を探して、隠れて。鬼とずっと遊んでたなあ。追い付かれても、色を見失っても隠れきれずいても、尻隠せず、知りもせずに。
やりたいことや好きなものを話す度に笑われてきた。いつしかこの口が話すのを辞めた。そうして辞めた俺を口が笑っている。
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