第62話 未来へ繋ぐ
翌日、執務室へやってきたアーサーに向かって、ソフィアはとある提案をした。
最初アーサーはひどく驚いていたが、最後まで聞き届けると、「分かった」と頷く。
「あの男にそんな過去があったとはな」
「無茶な提案をしているのは、自分でも分かっています。ですが、私はどうしても、この不思議な縁を無駄にしたくないんです。大切な人との突然の別れは、あまりにも悲しくて辛いです。相手が愛している人であればあるほど、なおさら」
「そうだな……」
アーサーは悲しげに目を細めて、瞼を閉じた。
彼もまた、大切な人との突然の別離を経験している。
だからこそ、テオとハンナの気持ちが痛いほど分かるのだろう。
「お願いします、アーサー様。どうか力をお貸し下さい」
深々と頭を下げると、数秒の沈黙ののち、肩に優しく手を置かれた。
顔を上げて――と促されて仰ぎ見ると、アーサーは満面の笑顔を浮かべていた。
それは、いつもの貴公子然とした大人っぽい微笑ではなく、悪戯を思いついた子供のように無邪気だ。
「あの傲慢男のために動くというのは少し
彼は片目をぱちりと閉じて軽くウィンクをすると、茶目っ気たっぷりに「まぁ、僕にまかせたまえ!」と言葉だけは貴族っぽく言った。
偉そうな言葉と軽快な口調があまりにもちぐはぐで、ソフィアは思わずほほ笑んだ。
「ありがとうございます、アーサー様」
「どういたしまして。だが作戦は、まだこれからだ。――さて迷える子羊ならぬ、迷える帝国男児を救ってやろうじゃないか。ふふっ、あの偉そうな男がどんな顔をするのか実に楽しみだよ」
「アーサー様、最後の言葉が少し悪役っぽいのですが、大丈夫でしょうか……。あまり変な計画を立てないで下さいね」
こうして、不思議な人の
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