第17話 膝枕と亀裂!?

とある放課後、由姫達は十月後半に始まる学園祭に向けての準備を

していた。もう十月に入っているので、今から色々な準備を

する必要があった。由姫達のクラスは定番の喫茶店をするのだが

その衣装を由姫達に合わせたコスプレの様な格好をしてお店を

出すようだ。


「じゃぁこう言う感じで進めるよ」


里奈が進行している。こう言う行事系は里奈が好きなことでも 

あり、クラスの中でも里奈が一番的確だと言うことで実行委員

の様な事をする事にしたが、由姫は反対した。大会予選が

行われているので、里奈が抜けるとバンドに支障が出ると

言ったが、里奈がどっちもやると言って続行した。


下校する途中、由姫達は全員でファミレスに寄った。夕子や美麗

洋子達のクラスは何をするのかとか聞いたりしたが、由姫が

終始不機嫌そうだった。


「由姫、まだ怒ってる?」

「当然よ。いくら学校行事でも今は大会中よ。それを」

「ちゃんとどっちも全力でやるから。それに、学園祭でうちらも

ライブするし」

「そうですよ由姫さん。どっちも全力ですれば楽しいですよ」

「大会は楽しむものじゃないわ。あまり浮かれてる様ならこの

大会、棄権するから」

「ちょっと由姫」


由姫は怒って出て行ってしまった。由姫が真剣なのはわかっていたが

それでも学園祭を楽しむのは悪くないと里奈は言っているが

洋子は由姫側だった。


「荒井さん。美波さんが怒るのは当然です。私達の優先するべきは

大会の方ですから。私達は二年生で、学園祭は来年もあります。でも

大会は今回だけなんです。来年もあるかもしれませんが、それでも

この初めで勝ってプロになるのにも意味があると思います」

「わかってる。でも、私はどっちも全力で楽しむわ」


少し不穏な空気になってしまった里奈達。先に帰った由姫は少し

街を歩いていた。気がつくと楓といた公園にやってきていた。


ベンチに座り、買ったジュースを飲む。すると誰かに声をかけられた。


「こんな所に一人でいると危ないぞ」

「!?楓、さん」

「楓でいい。どうした?ため息ついて」

「見てたの。ちょと色々あってね。大会が危なそうなの」

「大会?」


楓は由姫の悩みを聞いた。楓も由姫側で学園祭を楽しもうとは

していないので、由姫の思いがわかっていた。


「ま、俺らはあくまで今は学生だからな。しょうがないさ。そいつら

以上に自分が頑張ればいいだけだ」

「そうね。最悪、打ち込みでもいいわ。歌さえあればいいのもの」

「そうだな。だが、それをしたら本当に終わるからな。元から使ってる

ならあれだが、バンドでやってる以上、そいつらを信用しないと

最高の音は出せん。まぁ俺は信じてないが」

「言ってることがめちゃくちゃね。でも、それもそうね。ねぇまだ

時間ある?少し付き合ってほしいの」


楓は頷くと由姫が楓の膝に頭を乗せて横になった。膝枕をさせて

もらったのだ。邪魔だと言われる覚悟はあったが、楓は意外にも

そのまま受け入れてくれた。それをわかった由姫は楓の顔を見て

一瞬笑ってから目を閉じた。


それから三十分程してから楓は由姫を起こした。流石にもう時間が

時間なので楓は由姫を家まで送る事にした、


家の前に着くと由姫が家に入ってほしいと誘ったが、明日も学校が

あるので楓は遠慮した。


「じゃぁ今度時間がある時に来て」

「時間があればな。じゃぁあいつにも言っておいてくれ。じゃぁな」

「!?」


楓は一瞬隣の家、里奈の部屋の方を見た様な気がした。由姫は

気のせいと思い部屋に戻ると、そこには里奈がいた。


「なんでいるのかしら?」

「ちょっと話そうと思ってね。それに、今楓さんがいたでしょ」

「見てたの?」

「うん。一瞬私の方を見た。私に気がついたからかもしれないけど」

「そうね。それで話って」


里奈は学園祭の事や美麗達も大会の方をおろそかにはしないと

伝えた。由姫もわかったと言い部屋を出てお風呂に入った。里奈は

すぐに自分の部屋に戻った。由姫はお風呂の中で楓に膝枕を

した事を思い出していた。


それから由姫達は昼休みの時間も練習をする事にした。学園祭での

ライブの練習もだがやはり大会の方が優先なので里奈達が本気

なら練習を増やしてもついてきてくれると思い、時間まで練習を

した。


放課後は学園祭の準備をしつつ、大会用もしっかり整えていく。


ライブ前夜の金曜日、いつもは休みにしていたが、学園祭の準備で

出来なかった事をする為、夜までスタジオで練習をした。


「荒井さん、遅れてます」

「わ、わかってる。調整する」


里奈のテンポが遅れていたので洋子が注意する。演奏を終え由姫も

色々注意していく。


「これじゃまだまだだけど、これで明日は行くわ。それでいい洋子」

「仕方ないですね。何も出来ないよりはマシですから」

「ちょっと二人共、あまりそういう事は」

「本気なんでしょ?ならもっとできたはずよ。とにかく明日はこのまま

で行くから。今日は終わりよ」

「私も先にも失礼するわ」


由姫と洋子は先にスタジオをでた。里奈は少し落ち込んでいたので

美麗と夕子は残って里奈に付き合った。そんな感じでライブ当日に

なり、由姫達は一応いつも通りにしているが少し、美麗達とは

あまりコミュニケーションを取れないでた。


それはライブでも出てしまい、目立ったミスはないが、里奈は

少し間違ってしまったり、美麗達もどこか表情が暗く客達も

どこかおかしいのはわかってしまった。


ライブを終え、楽屋で由姫はすぐに着替えて、帰ろうとした。すると

美麗が呼び止めた。


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