第12話 美麗の揺れる恋心

とある休日、美麗と夕子は遊びに出掛けていた。もうすぐ予選だが

休みも必要なので二人は秋葉に来ていた。


これまでも二人でよく来ていたが、最近は忙しかったので

久しぶりに来て、二人は楽しんだ。


「美麗、手大丈夫?」

「平気だよ。もう演奏してもいいぐらいにね。だから

早くライブしたいな」

「そうだね。この前は楓さんがしてたけど、やっぱり私は

美麗の演奏の方が好き」

「夕子、ありがと。でも、一緒に演奏?したけど、あの人めっちゃ

すごいわ。一回聞いただけで覚えるし、何より、かっこいいわ」

「美麗、もしかして」

「どうだろうね。でも、狙えるなら狙おうかな。同じ楽器だし

ワンチャンあるかも」

「彼氏か、そういえば私達誰も誰かと付き合ったりしてないよね」

「そうだね。まぁ由姫さんがあれだから付き合ったらやめさせ

られそう」

「そこまではしないと思うけど、でも、誰も彼氏がいないってのは

私らモテてない部類になちゃうよね。バンドはモテないって

思われそう」


そんな風に話しながらマックを食べ終わり、店を出るが

その間にもファンから声をかけられたりしていた。二人は

一応帽子を被ったりしてるが、わかる人にはわかってしまう


買い物を済ませ駅につき、電車に乗る。二人は家が三駅程

離れていて、先に美麗が下りる。


「じゃぁお先にね」

「うん。また学校で」


美麗は途中でコンビニにより、それから家に戻った。着替えて

食事を済ませお風呂に入る。


「楓さんか。頼みに行った時も一緒にライブした時も、何も

しててもかっこいよかったな。よし、しばらくは楓さんを

妄想させてもらおう」


部屋に戻り、裸になってリハの時に一緒に撮った写真を

見ながら一人エッチを始める。いつも以上に感じている

のがわかり、絶頂した。


「やば、本当に気持ちいわ。これが本当に恋なのかな。でも

今はライブにも集中しないといけないから、程々にしよ」


と、言いながらその日は二回もしてしまった美麗。


それからもよく楓の事を考えるようになり、それは練習の

時にも出てしまっていた。


「朝倉さん、朝倉さん」

「!?な、何洋子ちゃん」

「何じゃありません。合わせて様としているのに全然演奏

しないから。もしかしてまだ手が」

「いや、手は大丈夫。ごめんちょっと考え事してて」

「美麗、ちゃんと集中して。あなたが一番遅れてるのだから」

「由姫さんごめん。ちゃんとする」


気合を入れなおして練習をし、終わってから由姫と洋子に

注意をされたので美麗は残って練習する事にした。


「やばいな。全然集中できない。どうしたもんかな。よし

誰もいないからオナ」


と言ったらドアが開き、夕子がやってきて手を止めた。


「ど、どうしたの夕子」

「美麗が心配で見に来たんだけど」

「大丈夫大丈夫。心配ないって」

「だったらいいけど。私も練習付き合うよ」

「そ、そうだね。その方がいいかも。ありがと」


一番見られたくない夕子には見られなかったので安心したが

それからもあまり上手く演奏はできなかった。それを見て

夕子が美麗に聞いた。美麗は素直に話した。


「じゃぁずっと楓さんの事考えてたの?」

「そう。だから集中できなくてさ。どうしようかなって」

「そうだね。やっぱり割り切るしかないかな。じゃないと

また由姫さん達に言われると思うし」

「だよね。まぁやってみるよ。ところで、夕子って

一人エッチする?」

「い、いきなり何を聞くの?」

「まぁまぁそれで?」

「そ、それは、するよ。ちょっと男の人に興味があるし」

「だよね。で、どんな事妄想するの?」


そんな話をしながら美麗は楽しんでいた。夕子も今の美麗を

わかってるので聞かれた事には答えていた。


家に戻り、美麗は今日はしないようにした。その変わりに

電話をした。その相手は楓だった。

翌日の放課後、美麗はある場所に向かった。そこは

楓が通っている学校だった。美麗達の学校から数駅離れた

ところにあり、校門の前で待った。


そうしてると、他の生徒達が集まってきた。美麗は有名なので

この学校でも当然知れ渡っていて、男女共に美麗の周りを

囲んでいた。


「本物だ」

「美麗さん握手してください」


とりあえず対応している美麗だが、人数が多くなってきて

どうしようか迷っていると、彼がやってきた。


「お前らそこで止まってるんじゃねぇ」

「楓!見ろよ。あの美麗さんだぜ」

「知ってる。俺の客だ。さっさとどけ」

「少しぐらいいいだろ。握手したいし」


男子達がそれ目当てに集まっていたので、楓は男子達を

蹴り飛ばした。


「さっさとどかないと蹴るぞ」

「もう蹴ってるだろう」


それから楓と一緒に出かけた美麗。二人が一緒にいると

すごい目立つので楓が美麗を公園に連れて言った。


「それで俺に何かようか?」

「う、うん。この前のライブを手伝ってくれたお礼も

したくて。ありがとう」

「礼を言われる程の事はしてないが、もらうものは

ありがたくもらっておく」

「うん。そうして。その方が私も嬉しいから」

「怪我はもういいのか?」

「大丈夫。もう練習もしてるんだけど、ちょっと上手く

行かなかくて」

「まぁ怪我した後だからな。無理すると前よりできなく

なるぞ」

「それもあるんだけど。えっと」


美麗は悩んでいた。楓の事を考えてそれで上手くできない

なんて言えないので、楓に教えてもらえないかを聞いた。


「俺はそこまでお人好しじゃない。自分事は自分で

なんとかするんだな」

「わかってるけど。でも、お願い。もっと上手くなりたいの」

「なら誰よりも練習する事だな。そもそも俺に頼るのも

間違ってる。あまり俺には関わらない事だ」

「楓さん!」


楓は先に帰ってしまった。美麗も家に帰るが、少し

落ち込んでしまっていた。それでも楓の事を

思いながらそのまま眠ってしまった。


美麗の心は揺れていた。




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