第9話 楓が言った言葉に引っかかる由姫
ここはラーメン屋。
「なぜ私はここに?」
「どこでもいいってお前が言ったんだからな」
それは楓に連絡してお礼をしたいと思い、何かしたいと言ったら
楓が飯を奢ってくれと言ったので由姫はそれを承諾した。
そして楓が選んだ店がラーメン店だった。
「あなた、食事制限はしないの?」
「しない。食べる時は全力で食べる。それ以上に動けばいいだけの
事だからな」
「それはそうだけど」
「嫌ならお前は食べなくていいぞ」
「食べるわ。もう注文したのだから」
由姫はあまりラーメン系は食べてない。嫌いなわけじゃないので食べるが
今は体力もつけたかったので控えてたが、食べる事にした。
ここは普通のラーメン店。その中に超ビジュアル系の二人が揃って
食べている。しかも二人は有名だ。店の外にもそれを聞きつけた
人達が集まり出していた。それでも二人はそっちを気にする事
なく食事をした。
その食事は三十分程続いた。食事を終え、二人は外に出た。そこには
二人を知るファンがいたが、楓は気にせず歩いていく。由姫も
ついていき、楓は少し遠くの小さな公園に入った。
「悪かったな付き合わせて」
「いえ。でも、まさかあなたがあんなに大飯食らいとは」
「人は食わないと死ぬからな。今食べれる時は食べる。それだけだ」
「何か重いわね」
「ああ気にするな」
二人はベンチに座り、ジュースを飲んでいた。楓も由姫もあまり自分から
話す方ではないので沈黙が続いた。
「ねぇあなたのバンドどこまでが目標なの?」
「プロだ」
「やっぱり。私もプロを目指してるわ。だから負けない」
「俺は勝ちにはこだわらん」
「ならなぜ出るの?」
「他の奴らが出たいって言ってな。まぁそれでプロになれるのが
早くなるならって思ってな」
「急ぎ?」
「ああ。プロになって稼ぐ。売れれば簡単に稼げるからな」
「まさかお金が目的?」
「ああ悪いか」
「悪くわないけど、そこまで困ってるの?」
「困ってなかったら音楽なんてやらん。それに死ぬ事ができないなら
生きるしかない。生きるには食べないといけないからな」
「・・・・・・」
由姫はやっぱり人違いなのかと思った。こんな性格な人が孝弘と
は思えなかったからだ。
「やっぱり勘違いだったみたいね」
「最初からそう言ってる。それで、そいつはお前のなんだ?」
「・・・・・・大切な人」
「そうか」
「それじゃぁ。助けていただいてありがとうございました」
「あまり無茶するなよ。命あってのものだからな」
先に由姫は帰った。家に戻り、部屋で一人エッチをする。が、楓の
事が気になって一度止めた。
「何かあったのかしら。出なければあんな性格にはならないわ」
深刻に思いながらも由姫は続けた。翌日、里奈と一緒にスタジオに
向かう途中、由姫は食事をしようと里奈を誘い店に入った。
「由姫、あんたラーメン好きだっけ?」
「そこまでは。でも、食べたいと思ったから食べるだけ。それに
安いから」
「まぁ色々資金は使ってるからね。それでもまさかラーメン屋に
来るなんて。もしかして彼と来たとか?」
「来たわ。ここじゃないけど、昨日一緒に食べに行った。お礼も
かねてだけど」
「なるほど」
里奈はずっと由姫といるがラーメンを食べる姿はあまり見たことがないので
貴重な体験をしたと思った。それからスタジオで練習をする。洋子達も
由姫を心配したがもう大丈夫みたいで安心していた。
それから夏休み最後に行うライブに向けてその会場に向かった。
会場に到着するとそこには依頼をしてきた人達が集まっていた。由姫達
は挨拶をし、打ち合わせをする。それからステージに立ってみた。
「広い」
「本当に今まで一番広いね夕子」
「うん。こんな大きなところでできるんだ」
「由姫、感想は?」
「悪くないわ」
「!?」
由姫は中央に立って歌い出した。何も曲は流れてないがアカペラで
歌う。その歌に里奈以外の関係者達は聞き入っていた。
「すごい」
「さすが今一番プロに近いって言われるだけあるな」
「彼女達ならここでも成功するわ」
由姫の歌でライブの成功を確信する関係者達。その夜、由姫達は
食事をご馳走してもらう事になった。そこは焼肉屋で、美麗達は
喜んでいた。里奈も嬉しいが由姫がどうするか心配だった。
ライブの為に食事制限したりするのであまり食べれないのではと
美麗達も密かに思っていた。
「気にしなくていいわ。まぁ自分で調整すればいいだけだから」
「やったぁ!食べよ」
美麗達も由姫と一緒に体力づくりや食事制限をしていたのでその
由姫から許可が出たので遠慮なく食べた。洋子は普段からそこ
まで食べないのでいつも通りだ。里奈も楽しみながら食べていたが
途中で由姫がいつも以上に食べてるのに気づいた。
「由姫、そんなに食べて大丈夫なの?」
「平気。これ以上体調を崩さないようにしっかり食べないと」
「でも、もういつもの倍は食べてる気が」
「そうね。今の私はここが限界」
「由姫?」
由姫は意識しながら食べていた。楓が言った食べれる時に食べると
言う言葉が引っかかっていたからだ。その言葉の意味もそのうち
わかる事になる。
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