第8話 由姫を看病したのは?
由姫達がやってきたのは日本一大きい湖だ。その自然とは真逆で後で
東京に戻り、そこと合成した映像にしようと決めていた。由姫達に
とっては初めての旅行にもなっていた。夏休みなのでここには二泊三日
の予定でやってきた。
近くの旅館に泊まってそこから湖に行く。旅館から三十分程で
到着し、準備をする。
由姫はマイクとスピーカー、洋子はベース、里奈はギター、美麗は
ショルダーキーボード、そして夕子は最寄駅の近くにあった楽器
店から借りてきたドラムセット組んでいく。
それからカメラ等も設置する。カメラは三台用意し、撮影する。
それまでにずっとイメージをしてきて、それを表現する。最初は
撮影に少し戸惑ったりしたが、少しずつなれてきた。曲も
一番最初に作って由姫達自身の代表曲にもしている、crossingと
言う曲を演奏する。
撮影は夜まで行い、この日の撮影を終えて旅館に戻る。
「疲れた」
「まだ明日もあるよ。大丈夫?」
「大丈夫。温泉もあるしそれで疲れを取ろう」
「温泉。いいですね」
「由姫も行くよね」
「どうせ里奈が連れてくでしょう。なら早く行きましょう」
「さすが親友わかってる」
由姫達は温泉に向かった。そこは女風呂でそれなりに広い
所だ。
「いい湯だね」
「本当に疲れが取れるみたい」
「由姫、気持ちいね」
「そうね。今ここにきてよかったわ。これまではずっとライブと練習で
ゆっくりできる日がなかったから」
「そうだね。まぁこれからも忙しくなるけどね」
「少なくともprayerが終わるまでは止まってられません。この撮影も
それを成功する為に必要な事。大会予選が始まる九月から最終戦が行われる
十二月二十五日までは動き続けないと」
「その予選を勝たないとまず意味がないよね。指定の会場で何組かで
ライブをしてそこでの投票数で一番か二番にならないと本線には
進めないからね」
「うん。その為にもう他のバンドも色々宣伝してたりしてる。それが」
「ええ。動画の配信ね。それをするかしないかでだいぶ変わるわ」
「その為にもこれを成功させないとね」
一時間程入った後部屋に戻り、明日の確認をしてから就寝した。その
夜、由姫は一人ベランダで月を見ていた。
「孝弘」
しばらく黄昏てから戻り就寝した。次の日、湖に行き、撮影をする。すると
どこからかそこでcrosswiseが撮影してるという噂が広まり、現地の
ファン達が集まってきていた。
「美波さんどうします?」
「構わないわ。聴かせてあげましょう。せっかくきてくれたんですもの」
「じゃぁ始めますか」
由姫達は来てくれてるファン達にゲリラライブみたいな感じで演奏を
した。それに来ていたファン達は喜んだ。その日の撮影も無事
終わり、来てた人達にお礼を言った。それは宣伝でもあった。
そうして最終日の撮影も終わり、由姫達は地元に戻った。
一日各自家でゆっくりした後、また撮影を始める。今度はスタジオで
の撮影や、街に出て演奏なしの撮影もする。都会での撮影をすれば
それはすぐに広まり、SNSなどで話題になっていた。
それから一週間ぐらいして、美麗達が編集しようやくPVが
完成した。それを見終わった由姫達。
「すごいじゃん美麗」
「ええ。よくこんな風にできるわね」
「さすがに大変だったよ。夕子も手伝ってくれたからね」
「ありがとう夕子」
「いえ。好きでやってますから」
そうして完成した動画をネットにアップした。
その成果はすぐに数字に表れた。それを知ったのは二日後で
スタジオで練習している時だった。美麗が休憩の時に見たら
その再生回数がとんでもない事になっていた。
「これ、本当なの?」
「本当みたいね。今もコメントがどんどん届いてる」
「美麗のスマホパンクしない?」
「大丈夫。それにこれでパンクするなら嬉しい悲鳴だよ」
「そうね」
それから由姫達の動画が話題になり、次にライブをすることになる
会場では満員で外まで列ができる程にまでなっていた。
その事もあり、由姫達の所に大きな会場でのライブをしてほしいと
言う依頼が殺到した。その依頼の中で一番大きい会場のホールでの
ライブの依頼を受けた。それを夏休み最後の日にする事にした。
その会場は五千人も入るところで、アマチュアでそこを使えるバンドは
そういなかった。なので由姫達はそこを選び成功させる為に練習を
増やした。
曲も増やして今できるオリジナルは十曲を超えた。その曲を全て
作ってるのが由姫だった。なので由姫の負担が多くなっていた。
その負担が表に出始めたのは練習していた時だった。その日の
朝から由姫は少し熱っぽかった。これぐらいなら大丈夫だろう
と思い、練習に参加した。
由姫の様子がおかしいのは洋子達もすぐに気づいた。
「美波さん大丈夫ですか?」
「平気よ。ちょっと寝不足なだけ」
「そうは見えないですけど」
「由姫、今日は帰ったら?」
「平気、熱も、大した事」
バタンと由姫はその場で倒れてしまった。慌てた里奈達は健を呼びに
行こうとした時だった。
それからしばらくして由姫が目を覚ました。そこは由姫の部屋だった。
「ここは私の部屋」
「由姫、よかった気がついて」
「里奈、私」
「熱を出して倒れたんだよ。もう頑張りすぎっていつも注意して
るのに、聞かないから」
「ごめんなさい。これからは気をつけるわ」
「しばらくは安静してろって。本当は病院に連れて行きたかった
けど、彼がそこまでしなくて言いって看病してくれたの」
「彼?」
「孝弘って言いたいけど、今は楓さんって呼んだ方がいいかな」
「彼が?」
「ええ。たまたまスタジオに来たみたいで、それで手伝って
もらったの。なんかすごかったよ。的確に皆に指示してしっかり
看病してたから」
「そう彼が」
「ま、悪い人じゃないのはわかったからいいかな」
「そうね。後でお礼を言っておくわ」
「できる?」
「しないといけないからね」
そうして三日程安静して由姫も体調を戻した。それからお礼を
言うために由姫は楓に連絡した。
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