第7話 すれ違うお思いの中、新たな活動へ

由姫の部屋で里奈が孝弘との事話した。それを聞いて洋子が里奈に色々聞いた。


「あの人がその人ならなぜあなた達の事を知らないような風に

していたのですか?普通ならすぐに会いに来たり、話しに来たり

するものでは?」

「前の孝弘ならすぐにそうしたと思う。でも、もしあれが孝弘なら

全然性格が違ってるの。あんなに強くなかったし、容姿も性格も

全部が違ってる。あれなら由姫が確信を持てなくて当然だよ」


里奈が話している間、由姫はずっと黙っていた。


「でも、それじゃ由姫さんがかわいそう」

「せっかく、思いの人と会えたのに」

「まだ確定じゃないからね。それに約束もあるし。もし、彼がその約束を

守ってるならプロになるまでは話さないようにしてるのかも」

「だとしてもせめて本人だって教えてくれれば」


それから由姫はずっと黙ったままだった。美麗達が帰って里奈が残っても

話そうとしない。


「由姫、どうするの?もし、また会ったら問い詰める?」

「・・・・・・何も聞かないわ。彼が話さないなら私も聞かない」

「由姫」


それから少しの間、由姫は練習を休むようになった。学校で会っても

誰とも話さず、里奈とも話そうとしない。取り合えずテストは終わり

もうすぐ夏休みに入る。休みに入ったらライブの予定が多く入るが

その練習ができていなかった。


そうして本当なら式で由姫達が歌う予定だったが、由姫が体調が悪いと

いうことで式でのライブはできずに夏休みに入ってしまった。


洋子は里奈達を集めてこれからの事を話し合った。場所は学校の

屋上だ。


「このままでは大会どころか私達、解散しなければいけないまで

の所まで来てしまってます。荒井さん、まだ彼女は」

「うん。ずっと落ち込んでる。挨拶しても返事をしないし。あんな

ふうに塞ぎ込んだ由姫は彼と別れた時以来かな」

「どうにかできないの?里奈」

「これは由姫の問題だからね」

「あなたの問題でもあるのでは?あなたも美波さんと同じなのでしょ?」

「そうだね。正直私もきついかな。こんな風に話してるけど、ずっと

友達だった人があんな風になっちゃうって思うと」

「里奈さん。あの、もう一度その人に聞いてみたらどうですか?」

「夕子ちゃん。そうしたいけど、聞くのが怖くてね。また違うって

言われたら。本当に別人ならいいけど、由姫が気になってるなら」


里奈ももう一度彼に聞こうとはしたが、電話をすることはできなかった。

それでもやっぱり会って確かめたいと思い、後日、健のいるスタジオに

向かった。連絡先は知っているがそれだと話しづらくなるので

彼が来る日を確認いようと店に来た。


「彼らなら今日来るよ」

「なら待たせてもらっていいですか?」

「いいけど、美波ちゃんいなくていいのかい?」

「本当は一緒に話したいけど、今は落ち着かせたいから」

「そうか」


それから里奈は彼が来るのを待った。そして一時間程経った時

誰かが店にやってきた。それは彼らだった。


「いらっしゃい。ああ楓ちょっといいか?」

「なんだ?」

「お前に会いた人がいるから一人で中に入ってくれ」

「俺に?」

「お!またお前のファンか?」

「ここまで追ってくるのか!すげぇな」

「やかましい!それでそいつは誰だ?」

「入ればわかる」


楓は言われた通り、一人でスタジオに入った。そこには先に入っていた

里奈がいた。それに気づいた楓は出ようとした。


「待って!あなた孝弘でしょ?」

「違う。前も言ったが俺は楓だ」

「それはバンドでの時の名前でしょ」

「本名だ。俺の名前は霧沢楓。孝弘なんて名前じゃない」


楓は生徒手帳を見せた。そこには本当に霧沢楓と書かれていた。それでも

里奈は信用しなかった。


「あの由姫が間違えるはずがないわ。あれだけあなたを好きだった

んだから」

「そいつの事はだろ。それは俺じゃない。要はそれだけか?なら退いて

くれ。こらから俺らの時間なんでなっ!?」


スタジオにバチンと音が響いた。里奈が楓の頬を叩いたからだ。里奈は

そのままスタジオを飛び出した。


「おいおいさっきの子泣きながら飛び出したぞってお前その顔」

「なんでもない。虫がいたから叩いただけだ」


それから里奈は家に戻った。部屋に飾っている孝弘と由姫の三人が

写ってる写真を眺めた。


「孝弘のバカ。あれは絶対孝弘だ。なんであんな風に」


里奈は少しの間泣いていた。落ち着いたのは夜だった。スマホを見ると

由姫から電話が来ていた。ラインも来ていて窓を見てと書いてある。

里奈はカーテンを開けた。そこには由姫が立っていた。二人の部屋は

互いの窓から行き来できる距離だった。


「由姫ごめん」

「あなたが謝ることはないわ。里奈、練習するわよ」

「もういいの?」

「ええ。もし、あれが孝弘でもそうじゃなかったとしても、プロに

なれば全てわかるわ。プロになった私達になら会いに来てくれる

はずだもの」

「そうだね。由姫の言う通り私達がプロになればいいだけだもんね!

よし絶対優勝しよう」

「ええ。頼りにしてるわよ私の一番のパートナー」

「了解!私の一番の親友」


そうして由姫も里奈も再びプロを目指す事を目標にした。由姫は洋子

達にも謝り、それから練習を再開した。その再開をライブで

示す為に、由姫は学校に提案した。夏休みの間にも何日か登校する

時があるのでそこで式でできなかったライブをしたいと相談し

その許可をもらった。


その間も予定していたライブも行う。遠征まではできないが

近くの県には行き、そこでライブをする。あの動画の効果も

あり、どこに行っても声をかけられる程に知名度は上がって

いた。それまでそういうやり方に乗り気じゃなかった由姫だが

ある提案をした。


「PV!?」

「ええ。私達をより知ってもらうには今の主流のやり方をするのも

一つの手段だわ」

「確かに今は簡単に動画を作れますからね」

「それに、そう言うことは二人が得意でしょ夕子ちゃん、美麗」

「まぁね。私はこれでもそう言うことが得意だから。ああでも

本格的にするなら機材を揃えたりしないと。私らの持ってるのは

遊びで使うような奴だからね」

「それなら問題ないわ。ライブでもらった資金で買えるだけはあるもの」

「そういえば、由姫が管理してたもんね。私らに配る分と全体での

資金にするって事で」

「ええ。ライブをするにもどこかに行くにも大事なお金よ。洋子以外

には任せられそうになかったからね」

「ええ、私でも任せてもらえないの?」

「里奈は違う意味で任せれないわ。この中で一番真面目なのは洋子

だもの」


そうして由姫達はPVを作る為に色々機材を買い、どこで撮影するかを

相談した。その撮影する場所になったのはとある県にある湖だった。

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