第3章 閑話 シャルロッテの日記帳

 ――日記帳――


 某日


 あの後わたくし達は、先ず、自分達の境遇を調べていくことに致しました。今でこそ、お互いに冷静さを保っておりますが、ブリジット先生は、当時、巡礼には参加しておらず、学園にいたようです。ウィルとデメテル様風の少女、神聖国司祭らと共に巡礼して回っていた様子。つまり、デメテル様は居たと考えれます。


 大司教ゼクスの名前は無かったそうです。色々と進んでる歴史が違うようです。


 冷静さを失ったのが、この後で、ウィル達は山賊に夜襲を受け、亡くなったと。恐らく寝ている際等の奇襲なのだろうと、報告があったそうです。

 つまり、だろうと言うのは、争った形跡が無く、食料と女性数人が連れ去られ、焼き討ちされたとの事でした。何が言いたいかというと、村人達や聖職者は寝ている間に殺され、燃やされ炭にされていた。となります。


 暫く数日、わたくしも先生も、絶句し嘆きましたが、遺体が無い事を考え、今、やれる事をやっているわけです。


 次に、わたくし達家族も、ミレーユ様アルフレッド様も、ウィルを死んだという扱いにしており、わたくし達もエレシス村へ向かい、ミレーユ様と軽くお話してきましたが、思い出すのが辛そうで、長居せずあとにしてきました。マリーは既にわたくしの知る、ウィルと同じくらい成長しており、本当に複雑な気分の毎日です。


――シャルロッテ・ウィンチェスター


 某日


 ひとまず、わたくしに婚約者は居ないようで、ただ……。この5年間、クリス先輩が家をも使った手段で、わたくしにアプローチを続けてきているようで、と言うよりも、屋敷に戻ると良く待ち構えております。

 ローリーとは、良好な関係を築いておりました。度々、ご飯を振舞って貰ったりしているそうな。


 どちらの2人も、仕事という仕事はしておらず、大森林の素材で収益を得ているようですが、クリス先輩の家は自由なのでしょうか。それとも、3男だからなせることなのでしょうか。わたくしの家は、兄様とわたくししかいないのもありますが、社交を経験する年齢でもありながら、断り続けているそうで、貴族社会に疎い、ただの小娘になってます。そもそも、7歳で記憶が止まってるのも原因です。


 ご飯と言えば、5年前以降は作物に目立った被害は無くなったとのことでした。


――シャルロッテ・ウィンチェスター


 某日


 父様も母様も、わたくしが学園にいる頃から、わたくしが塞ぎ込んでしまっている事に、頭を悩ませていたと、アメリアから教えて貰いました。きっと、わたくしの知らないわたくしも、ウィルのことを考えていたのかもしれません。


 以前、先生とこの先に付いて話し合った目的ですが、一向に進展が無い毎日です。


 焦りばかり募っていきます。


――シャルロッテ・ウィンチェスター


 某日


 先程、ブリジット先生と言い争いをして、研究室を飛び出してきました。

 原因はわたくしなのでしょうが。山賊が燃やした村に見に行きたいと、提案した事がきっかけなのかも知れませんし、違ったのかも知れません。


 勿論、家でも反対されますし、その為に護衛や馬車などは、絶対に出さないと言われております。自分で用意出来れば良いのでしょうか?


――シャルロッテ・ウィンチェスター 


 某日


 今日は、気分転換に、煩わしい……、クリス先輩とローリーにお願いをして、狩りに連れて行って貰いました。勿論、こっそり屋敷を抜け出してますが、若しかしたら、遠くで護衛がいたのかも知れませんが、帰ってきてからでは、今更ですね。


 わたくしの記憶の中では、初めての狩りなので、なるべく安全な魔物を選んでもらいました。なんだか、ブニョブニョした液体の様な存在でした……。


 初めて自分で得たお金は、なんだか使うことが出来ず、宝石箱にしまうことにしました。少し楽しかったですが、あまり人に言える様な身分では無いこともわかるので、秘密にしております。


 先生とは、未だ険悪な雰囲気です。


――シャルロッテ・ウィンチェスター


 某日


 ヒメ・オキツさんの、知識が役立つ内容の物がなかなかありません。と言うのも、この世界とヒメさんの世界の在り方が、根本的に違う事が多いのです。

 恐らく、国家単位で進めなければ到底出来ない事が多く、何かを作るにしても、必要な材料が何処にあるのかもわからないのです。

 タクトさんも言っていた、急速な文明の成長が原因にあるのでしょう。


 ただ、わかったと言えば良いのか、第6世代能力は、魔法にも大きく影響を与える事がわかりました。タクトさん風に解釈するなら、イメージだけで魔法が使えるのです。びっくりですね。


 寝る前に、ウィルを思い出してます。


――シャルロッテ・ウィンチェスター


 某日


 先生と、少し笑いながら話すことが出来ました。わたくしの詠唱無しの魔法に驚いてくれました。

 この時のわたくしは、ホッとしていたと思います。

 ただ、強いて言えば、わたくしにとっては、やはり詠唱を使う方が、使いやすいし威力も大きいかも。


 先生は、わたくしがヘカテーから貰ったクリスタルを探し始めているとの事でしたが、わたくしの指輪のクリスタルも、先生の耳飾りのクリスタルも、この世界に来た時に砕けて無くなっております。


 既に、あれから半年は経っておりますが、一向に進展が無く、先生も何か出来ることがあるなら、これくらいしか考えられない、と考えている様子です。


――シャルロッテ・ウィンチェスター


某日


 わたくしも、先生の調べている、特殊なクリスタルを探すことにします。先生の予想では、メル大森林の奥地にあると考えているよです。

 わたくしは、探索するなら人は多い方が良いと考えて、クリス先輩とローリーにも、事情が分からないように説明し、クリスタルを一緒に探してもらうことにしました。危険な事に巻き込むのは心配ですが、戦力がわたくしだけではどうにもならないのです。


 早く、ウィルもクリスタルも探さないと。


――シャルロッテ・ウィンチェスター

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