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 娘が7歳になり、小学生になった頃には、既に母親への反抗心は無くなっていた。

 母親は娘に対して、暴力を伴う躾けで礼儀礼節を厳しく教え、娘は、母親には絶対に逆らってはいけないのだと強く言い聞かされて育った。

 そして何より、心無い言葉やちょっとした反抗でさえ、母親が涙を流して傷つき、こちらの主張に全く耳を貸さず、何日も口を聞いてくれない事を理解し、母親の機嫌に細心の注意を払いながら生活することに、慣れてしまっていたのであった。

 母親は祖母と離れて暮らしていた。酒に酔うとすぐに祖母のずさんな性格と自分の元夫の下劣さを娘に言い聞かせた。

 そしていかに自分が娘を愛し、大切に育んでいるかを娘に説いた。


 娘は、そんな母と、笑顔で話を聞く自分自身を、斜め右上から俯瞰して眺める癖がついていた。

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