1
娘の両親は、娘が2歳になる前に離婚していた。
二人が婚姻届けを出す際、既に母親の胎内では安定期を迎えた娘が眠っていた。
二人は酒の勢いで一晩を共に過ごし、子を成したのであった。
母親の両親、つまり娘の母方の祖父母は、こちらも既に離婚しており、母親は自らの母と二人で暮らしていた。
母親の妊娠に対し、彼女の母は心から祝福した。父親の両親、こちらはつまり娘の父方の祖父母となるが、彼等もまた、息子が迷惑を掛けた責任を取ると息巻いており、二人の結婚話は順調に進んだ。
娘が生まれ、母親は自宅で育児に追われていた。父親は、母親が相当の癇癪持ちで、一度思い込むと全く会話が成立しない程にヒステリックを起こし、何日も無条件に平謝りしなければ機嫌を直さないということを、結婚するまで知らなかった。
父親は、そんな妻に愛想を尽かし、他の女の家に転がり込むようになった。母親もまた、この男が元来軽薄で、浮気性であったことを知らなかったのだ。
一晩の関係で子を成す様な男女が、往々にしてその様な精神であるということを、二人は推して知るべきだった。心のどこかで分かっていたのであったとしても、考えることを、してこなかったのであった。
そして二人は、たった一人の娘が2歳になる前に、離婚した。
父親はそれ以来、娘と会うことを母親に固く禁止された。
こうして、娘の人生には不幸が約束された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます