第3話 大森林


 体全身の束縛が消えると大きく肩で息をする。失った魔力を補填するようにいつも以上に呼気が荒くなるのを感じながら周囲を見渡した。



 見慣れない植物や木々。そして空に目をやれば青い月がある。

「地球にもそれなりにファンタジー要素があったとはいえどもなぁ」

 いかにもという存在に目をやりながら警戒する。予測が正しければ指定召喚なので術者が周囲にいるのかと疑ったがそういうわけでもないらしい。


 念のためスマホやGPS機能付きの電子マップを使ってみるも「データ無し」と表示された。……その割には何故かインターネットは電波が最大限を示す状態である。


そんなことをしているうちにふとあることに気付く。

「魔素で正しいのか分からんが濃度事態は地球よりかなり上だな」

 普段なら1日は掛かるはずの魔力回復が既に完了しかけている。霊地かどうかは詳しい検診をしないと分からないがそれなりに良い土地なのだろうか。故郷の島以上に回復が早いのは正直驚きである。


「いくらこの場で考えても仕方ないし散策するか」

 制服を手早く着替え動き森の狩人みたいな服装になる。マントでバックパックを隠し組み立て式のショートボウに矢を番えておく。弓の取り回しは苦手な部類だが仕方ない。狩りの成果がない方が怪しまれるかも。


 そんなことを考えつつも動物の痕跡を探す。獣道や折れた枝葉がないかを探す。魔力で視力と聴力を強化しつつ木々の枝から枝を飛び移る。魔力の循環やその機能性がこの世界と同じことをテストするためなのだが。

「こりゃあ感覚が違いすぎる」

 普段の半分も魔力を消費せずに二倍以上の効力を発揮している。下手をすれば大きな枝に激突するところだった。怪我をするわけではないが何となくロクでもないことになりそうだったので咄嗟に魔法を使用した。

「盾の魔法って本当に便利だよな」

 ただ相性が悪くて多量の魔力を消費することになるわけだが。



「あっ」



 数分後。

 夜の森林の木々の上で魔法を足場にして周辺を見渡していた。木の高さが50m以上のものが普通であり大きいものでは100m近くあり上るのに苦労した。

 

 そして絶望した。


 周囲、数kmを覆う大森林に。

 木々に覆われて地上を捉えることができず集落はおろか河川があるかも確認できない。これは数週間以上のサバイバル生活を送ることになるなと思い、寝床確保のために地上に降りようとした時だった。



 爆音と魔力。そして少女の悲鳴を微かに捉え……その方向へと駆けだした。

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世界の果てと終わりの前に 髙﨑 レイ @reitakazaki

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