第2話 始まりの前
3月下旬
新学年に向けての準備を進めていた時にそれを幻視した。
地球そのものを覆う魔力の膜。その奥にある無数の流星は地上に降り注ぐことはない。
(隠匿系に妨害系……。防御系の効力はなしか)
前にいる人物に気付かれないように魔力を眼に通し解析する。
「おや。どうされましたか?」
どうも考察をしている間に随分と先にいた彼女は既に生徒会室の扉を開けてこちらを見つめていた。流石に彼女に迷惑をかける訳にはいかない。
「なんでもありませんよ。ちょっとした警戒みたいなものですから」
「そう。急に足音が消えたから驚いたわ」
何でもないように告げたその言葉にハッと意識を切り替える。周囲に誰も居ないことは確実なのだがどうも存在感が一気に失せていたらしい。
生徒会室に入ると彼女はすぐさまに扉の鍵を閉める。この学園の創立目的からして機密性が高いこの部屋は生徒会役員間での密談に使われることが多い。
例えば世界でその名を示す大企業のご令嬢とその護衛の会話とか。
「一応聞くけど裏の人間ではないよね?」
紅茶を入れつつも自身にとっての最大限の懸念事項を挙げていた彼女はどこか先ほどまでの表の顔ではなく経営者としての顔に変貌していた。
「流石に。ある意味では監獄に近い此処にちょかい出せるヤツはいないな」
「そうなら良いわ。貴方独自の調査網に何かが引っかかる程度の認識でいいわね。……大分拙いよね、それ」
まあ対界用の警戒なんて世界政府なんかか、国際連合軍でも作らない限りは不可能だろうし。アレがこの世界に害を及ぼすかどうかまだ判断材料が足りない。ただそれを話すのは彼女にも危険が及ぶ可能性があるので避けるべきだろう。
「ほぼ勘みたいなやつだしな。気にしても無駄だろ」
「貴方の勘は当たるから怖いんだけど」
まぁ色んな技術併用しているから一般人との感覚のずれが起きているだけのはず。
大丈夫だよな?
その後、二人で片付けるにはやや多い事務作業をこなして今日の仕事はいいと切り上げられたので家に戻ろうとした時だった。
突如として金縛りのように体が動かなくなった。それだけではなく体内に溜めていた魔力が瞬時として霧散した。別に現世の地球人が体内に溜め込んだ魔力を霧散させたところで影響が出る訳ではない。そして束縛をするわけでもない。単に嫌がらせとしか言いようがない状態であろう。
ただ1つの術式系統を除く限りは。
そしてそうだと断定できる前に足元に魔導式が現れ霧散したであろう魔力によって全身が包まれる。
「指定召喚式かぁ」
一体何処に、何故呼ばれるのだろうか。そう思えたかもしれない瞬間。
世界の歯車が動き出す術式が完全起動した。
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