短編置き場

皆月いく

第1話 月曜日の朝、”あの子”が死んだ。


月曜日の朝、”あの子”が死んだ。

原因は、わからない。


私と”あの子”は友達だ。

小さい頃からの友達だった。

六歳の頃まで住んでいたアパートで、母親に追い出されて泣いていたところ、隣に座っていたのが”あの子”だった。

引っ越した後も”あの子”は、近所の公園を待ち合わせ場所にして、私に会いに来ていた。

辛いときも嬉しいときも一緒にいてくれた。

”あの子”とは、なぜか趣味がよく合っていて、いつも一緒の本を読んだり、放課後は誰もいない公園のブランコで遊んだり、自由帳に誰も知らない物語を紡いだりしていた。

友達のいない私にいつだって笑いかけてくれた。


それなのに、なんで……。

”あの子”が死んだ、”あの子”が死んだ、”あの子”が死んだ、”あの子”が死んだ……。

私は、叫びたくなる気持ちを抑えながら学校へ向かう。

なんで”あの子”が死んで、私が生きているんだろう……。

私が死ねばよかったのに……。

無駄にきれいな朝日が憎い。

いつもの日常を過ごしているクラスメイトが憎い。

なによりも、嫌いなものばかり目についてしまう私が嫌いだ。

いつもより長く感じた学校での1日が終わった。

机の中に教科書とノートが残っていないか確認する。

机の中から二つ折りの紙が落ちてくる。

拾ってみると、表には私の名前が書いてあって、裏には”あの子”の名前が書いてあった。

紙を開いて中身を読んでみる。


それは、”遺書”のようだった。


『君は私で、私は君だった。

君は、大人になる度になにかを忘れるでしょう。

教室の隅で読んでいた童話も、誰もいない公園のブランコも、自由帳に描いた物語すらも……。

大人になるには、捨てなければいけない。

きっと君は私を必要じゃなくなってしまうでしょう。

だから、ここでお別れしよう。

ありがとう。

さようなら。』


最後の一行を読んだとき、私は涙が零れた。


『どうか、母親を棄てて幸せになって。』


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短編置き場 皆月いく @mina19

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