届いた贈り物
ひろのLINEが来なくなり既読にもならなくなった。
私は不安で、もしかしたら具合が悪くて入院でもしたのかと誰か知り合いは居ないか両親に話そうかと考える。
「帆乃花に荷物よ……これ、高校の頃のあの子よね?」
母が差し出した荷物、差出人は佐々木 博文。
ひろ……。
***
帆乃花へ
君は、今思えば最初で最後の恋の相手でした。
帆乃花の消えたいっていうツイートを見たとき、本当は消えてしまいそうな自分が最期に君に会いたくて、会いたくて仕方なくて君に近づいた。
君に再会する前に、僕は脳腫瘍で余命3ヶ月もって半年と分かった。アメリカに戻るのは嘘だった。この世を去るのをアメリカに行くことにしたんだ。
君を悲しませたくなくてついた嘘だった。
残りの時間、笑った君を見ていたい僕のわがままだった。
毎回、君に会うたびに僕は見納めのように君の可愛い姿をこの目に焼き付けていたんだよ。けっこう変態だろ?
もう一度、僕のわがままを聞いてほしい。
もし、僕に何があっても生きてほしい。君の心の中に僕を生かしてほしい。
それから、大事な人は僕で最後でもいいよ。その代わり、大事にしてくれる人を探してほしい。
できるかな?
ここからは書き足しです。
手術を受けることになった。弟の昌宏がドクターを見つけた。
どうなるか分からないけれど、僕はかけてみるよ。
恥ずかしいけど僕は今怖い。
今、君に会いたい。
もし、手術が成功したら僕から会いに行く。でももし、僕が居なくなったらその時は、先に書いたように僕のわがままを聞いてほしい。
帆乃花、僕の大事な人。
健康で笑って、おばあちゃんになるまで過ごせますように。
僕に出逢ってくれてありがとう。
本当はもっと沢山ちゅーしたかったよ。
ナルシストだから、痛みで苦しむのを見せたくなかった。許して。
***
小さな箱を開くと指輪があった。
指輪の裏にfor honoka sasaki from hiro
と一周するように彫られている。
「ささき……」
指輪を左の薬指にはめた。少しだけ大きなその指輪を抱きしめる。
「…………ひろ……う゛ああああ……」
気付けば子供みたいに泣き叫んでいた。
私は何も分かってなかった。ひろの苦しみも不安も恐怖も。自分の過去を後悔してひろに受け入れてもらえないと寂しがったり……自分のことばっかり。
ひろは……あんなに優しくて笑って……一人で抱えていたなんて……ごめん ひろ。
ひろの手術はもう終わってるかもしれない。私はひろのLINEにかける。つながらない……。
嫌だ……もう失うのは絶対に嫌。
奈々の実家に連絡するも奈々から折返しの連絡は来なかった。
このままひろから連絡来るまで待つなんて……出来ない。
ひろのマンションも誰もいなかった。
ひろの弟も連絡先は分からない。
私は誰か知り合いに繋がらないか聞くために卓也にまで連絡を入れた。
◇
数日後
ひろのLINEから着信
『ひろ』
『あ、弟の昌宏です。帆乃花さんですか?』
『はい』
怖い……彼が言う次の言葉が怖くてたまらない……彼の声が暗いか明るいか冷静に判断もできない。
『荷物つきました?』
『……はい』
『兄は……手術を受けました。』
『はい。』
『手術は成功したみたいですが、ちょっと』
『ちょっと……?』
『まだ数日しか経過していないのでなんとも言えないと医師からは言われましたが』
『……はい』
『言語障害も意識障害もない。けれど、何も分からないみたいで』
『何もとは……』
『記憶障害です』
『記憶障害……ひろは、脳腫瘍はとれたんですか?余命は……?』
『5年は伸びるはずです。再発がなければもっと。』
『あの……そちらは何処ですか?どこの病院ですか?』
『あ、後二週間は安静なんで、面会が大丈夫そうになれば私から改めて連絡していいですか?待っていただけますか』
『……はい 分かりました。あの、ありがとうございます 昌宏さん』
『いえ。きっと兄は一番帆乃花さんに会いたいはずです。また連絡します』
『はい。お待ちしてます』
ひろは勝った、手術は成功した。記憶障害だったとしても今すぐ会いたい、顔が見たい……けれど待てと言われたら大人しく連絡を待つしかない。
生きている、これからも……たとえ私を忘れていてもかまわない。ひとりで怖さと戦ったひろを抱きしめたい。泣いている場合じゃない、これからは私がひろを支える。そう決心した。
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