賭ける決意

 検査入院になり帆乃花ほのかには誤魔化しながらLINEでやり取りをする。ここまで黙ってたんだ、今更言うべきじゃない。奄美大島……行きたかったな。帆乃花は奄美大島にいつ行けるかと聞いてくる。


「兄さん」

 明るい声で昌宏まさひろが病室に来る。


「後から説明あるけど、結論から言うと腫瘍の全摘出来る確率7割。後遺症もあるかもしれないって」


「生存率は?」

「5年生存率8割 摘出して詳しく調べてからだけど」

「……5年」

「後遺症は、可能性として言語障害、記憶障害、軽くても難聴あたりが考えられるって」

「そう……手術失敗する可能性は?」

「……無いわけじゃない……合併症とか植物状態も」

「…………手術いつ?」

「早いほうがいいってさ」


 僕は、もう一度生きる可能性にかける。

 少なくとも僕の大事な人はそれを望んでくれるはずだ。

 だから、遺言のような帆乃花への手紙に書き足すことにした。



 ◇



「あの箱さ、出しといて。伝票貼ってるから」

「帆乃花さんって……」

「絶対出して」

「……分かった」


 怖い。もしかしたら、この手術で僕は消えるかもしれない。僕は僕で無くなるかもしれない。本当に生き永らえるか分からない。

 スマホの中の笑う姫姿の君をただ眺める。

 僕が最後に見たい顔は君の顔だから。


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