逃避行の末路

 僕は帆乃花ほのかを家まで送った。帆乃花だけを戦場に置き去りにするような真似は出来なかった。


「…………」

 帆乃花のお母さんは僕を軽蔑したように見て、帆乃花を連れて行く。


「私がひろと居たいって言ったの!会うなって言うならずっと一緒に居るから!汚いものみたいに言わないでよ!」


 帆乃花が泣き叫ぶような声が聞こえた。


「君は自分のとった行動で、どれだけの人が寝ずに心配したかわからないか?」

 玄関先で帆乃花のお父さんは静かにそう言った。

 わからない。わかりたくない……わかるけど、わかりたくない。


 僕は疲れた表情の帆乃花のお父さんにもう一度訴えた。


「どうして、僕と帆乃花さんが会うのをそこまで拒絶されるのか……分かりません。僕は、ただ彼女を好きになっただけです…………それも駄目ですか?」


「君は……こういう事を平気でやってしまう子だ。だからだ……うちの娘を巻き込まないでくれ」


 勢いよく玄関の扉が閉じた。


 今回の逃避行は裏目に出たのか?いやそもそも逃避行に走った理由は会うなと言われたからで……。

 言い訳を絞りだそうとしている自分に嫌気が差した。


 その日 帆乃花と連絡はつかなかった。

 うちの親は、とうとう何も言わなかった。

 何も言われないのは……一番否定された気分だった。



 次の日も帆乃花と連絡はつかなかった。

 次の日も。

 その次の日も。


 それから、僕のメールはエラーで返ってきた。

 電話も現在使われていませんとなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る