37冊目 世界旅行

 あるところに船で世界一周をしようとした女がいた。

 女が世界一周を試みたいと考えたのは、家を訪ねてきた旅行好きの親戚の土産話を聞いたのがきっかけだった。親戚が語る旅行先の風景や人物の話は、女にとっては物語の中の出来事のようにも思え、そういった経験が出来る親戚を羨ましく思うと同時に、自分もいつか同じように各地を回りたいと思うようになっていた。

 その後、女はどのようにして旅行をするか考え始めたが、結果的に選んだ手段は船による航海であり、女はその夢を叶えるために貯金をしながら様々な国を訪れた際に困ってはいけないと考え、英語を始めとしたあらゆる語学についての勉強に精を出し始めた。

 その甲斐もあってか女は英語の成績が学年内でトップクラスとなり、女はその事を嬉しく思うと同時に通訳者を目指したいと考えるようになると、更に語学についての勉強を頑張るようになっていた。

 それから数年後、大学生になった女は通訳者になるという夢を叶えるために留学をする事を決めたが、その方法がヨットを使用しての航海だったため、それを聞いた両親や友人達は非常に驚き、危険だから止めた方が良いと言った。

 しかし、女はその反対を押しきると、それまでに貯めていた貯金を使い、小型のヨットを購入した。そして、食料などを買い込んだ後、女はヨットによる航海を始めた。

 航海中、吹き抜ける潮風と波音に心地よさを感じながら女は航海を楽しみ、自分の考えはとてもよかったと考えていたが、日が経つに連れて女は徐々にそれにも飽き始め、早くどこかの国につかないかと考えるようになっていた。

 そして、航海を始めてから一週間が経った頃、女のヨットは突然降り始めた雨に襲われ、女が雨をどうにか凌ぎながらも少しずつヨットによる航海を後悔し始めていたその時、その近くを一隻の船が通り、女はその船の乗員達に助けられた。

 その後、女は乗員達の好意でその船に乗せてもらいながら航海を続け、様々な国を巡った。そして、数年後、乗員の一人と結婚した女は夫やその間に生まれた子供と共に帰国すると、通訳者として活躍しながら航海の際の出来事を綴った本を出版し、その内容に読者達はまるで物語の中の出来事のようだと評した。

 女はその後も仕事を続けながら寿命で亡くなるまで様々な国を巡り、その中で全ての国を訪れた事から、世間からは全ての国を巡った偉大な旅行家として尊敬の念を向けられたという。

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