31冊目 他種族の絆

 あるところに妖怪を幼馴染みに持つ女がいた。

 女がその妖怪と出会ったのはまだ幼稚園に入る前の幼い頃だった。女の家の隣に越してきたのが、人間に化けた妖狐の家族であり、両家の母親が見守る中、二人が遊んでいた際に人間の男児に化けていた若者の妖狐が楽しさからうっかり正体を見せてしまった事で女の家族は相手方が妖怪の一家である事を知った。

 その際、妖狐の母親と息子は正体を知られてしまった事に慌て、女の家族から何を言われるかと思いながらビクついていたが、女はその事を受け入れた上に相手が妖怪である事に目を輝かせ、妖狐の息子に対して色々な質問をぶつけた。

 それを見ていた女の母親も相手方を拒絶したり正体を吹聴したりするつもりはないと告げると、妖狐の家族は安心と嬉しさから涙を流した。

 そして後日、両家が揃って話をした際、妖狐の家族は住んでいた山を開発によって追われた事で、妖狐としての生活から人間として暮らす事に決めたと話し、他の人間に正体を知られてしまっては生活がしづらくなると身の上を語った。

 それを聞いた女の家族の提案によって、女は若い妖狐が正体を看破されないように支援を行う事にし、その代わりに若い妖狐は女が危険に晒されないように身辺の警護を行う事を取り決め、二人は幼馴染みでありながらお互いの支援をし合う仲となった。

 その後、二人は学校へ通う歳になったが、仕方ない時を除いて常に行動を共にしていた事で、それを見ていた男子生徒達から様々なからかいの言葉をかけられた。

 しかし、若い妖狐は自分よりも遥かに歳の若い人間に何を言われても気にしないといった態度を取り、女も妖狐が常に傍にいる事が普通になっていた上に妖狐が傍にいた事でからかってくる異性が実年齢よりも幼い子供のような感覚になっていたため、二人はいくらからかわれても何も反応をせず、その様子に周囲も徐々にからかう事を止めていった。

 そして時が過ぎ、女が成人を迎えた頃、いつものように二人は揃って外出をしていたが、その夜に若い妖狐は自身の女への想いを口にした後、綺麗な夜景をバックに女に結婚を前提とした愛の告白をした。

 女はその事に驚いたが、自身も同じ気持ちだったため、かつての妖狐のように安心と嬉しさから涙を流しながらその告白を受け、その後、二人は両家の家族や友人達に祝福されながら夫婦となった。

 そして、人間と妖狐の血を引いた半人半妖の子供にも恵まれ、二人は幸せな毎日を過ごしたが、種族の違いによって女は一足先に天国へと旅立った。

 その後、妖狐は他に恋人を作らずに女との思い出を懐かしみながら過ごし、寿命によって天国へ旅立った際もその顔はとても幸せそうな物だったという。

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