7冊目 星の少女

 あるところに星を見るのが好きな女がいた。

 幼い頃に家族で行ったキャンプで眺めた星空が彼女にとって衝撃的だった事で、彼女は星を見る事にのめり込んでいき、図鑑や星座盤といった様々な物を購入していった。

 そんな彼女の姿に家族は微笑ましさを感じており、プラネタリウムに連れていったり望遠鏡を誕生日プレゼントに与えたりするなど彼女の趣味には好意的だった。

 彼女も自分の趣味を応援してくれる家族には感謝をしており、学校での勉強に励む傍ら、惑星や星座に関係する神話の勉強にも精を出し、彼女らは幸せな毎日を過ごしていた。

 しかし、そんな毎日は彼女が病気を発症した事により突然終わりを告げた。医者は手を尽くし、家族は励ましの言葉を掛けたり完治後にやりたい事など話したりするなどして元気づけようとしたが、罹った病は彼女の体をゆっくり蝕み、医者からは持っても一週間だろうと診断した。

 その診断に家族は嘆き、どうして自分の娘がこのような運命を辿らねばならないのだろうと悲しんだ。しかし、当の本人はまるで自分が近い内に死ぬ事を知らないかのように明るく振るまっており、その様子に家族はきっと自分達のためだろうと思いながら残り少ない日々を過ごした。

 そして、彼女は家族に看取られる形でこの世を去り、葬式には家族や親戚の他、彼女の友人達も参列しており、その誰もが彼女の死を嘆き悲しんだ。

 その後、家族が彼女の部屋の整理をしていると、机の引き出しから白い封筒が見つかり、中には一通の手紙が入っていた。家族はその手紙の内容が気になり、仏壇に飾られた彼女の遺影に一度断りを入れた後、封筒を丁寧に開け、中に入っている手紙を読み始めた。

 手紙の内容は自分の星に対しての思いや好きな星を見るために様々な支援をしてくれた家族への感謝が綴られており、その内容に家族は涙を流しながら手紙を読み始めた。

 そして手紙も終盤に差し掛かり、最後の一文に目を向けたその時、家族は一瞬驚いたものの、すぐにそれを肯定する言葉を口にした。

 最後に書かれた一文、それは本当になりたい物について書かれており、そこに書かれていたのは亡くなった後には夜空を彩る星の一つになり、家族だけでなく色々な人の気持ちを安らげる存在になりたいという物だった。

 その日から、彼女の家族は星が見える日には揃って庭に出て、自分達の娘がなったであろう星がちかちかと瞬く様子を眺めるようになったという。

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