独り占めしたい症候群
「フミさん、いきなり土下座してなにやってんだ?」
カズマの言葉で俺は顔を上げようとしたがついっと顔をそらすシロに誠意を見せるために再び頭を下げた。床に叩きつけるくらいの勢いで。頼む、静まってくれ。
「シロ、俺からも言うよ。トウサマを許してあげてくれ。混乱してんだ、多分」
クロのその言葉で俺は顔を上げる。
すると、シロはクロを睨んで言った。
「……クロはフミさんを独り占めしたいって、思ってないの?」
「あ、ごめん。思ってる。大好きだし、独り占めしたい」
クロの言葉でシロの頬がぷくっと膨れる。それをみてクロはにやりと笑った。
「シロってさ、女っぽいよね。男なのに」
クロがどっこいしょっ、と言って姿勢を変える。それをみてシロはふんっと鼻を鳴らした。
「クロだって、男の子っぽいね。女の子なのに」
あああああ、ばちばちと飛び散る火花が見える。見えます。ケンカはダメ! だめですう!
「落ち着けよトウサマ。
「落ち着いてくださいフミさん。いきなり分かれたのでただ混乱しているだけです」
おおおおお落ち着いて、俺の呼吸、謎の型。ヒッヒッフー。ヒッヒッフー。
「フミさん、出産じゃないからラマーズ法は意味がない気がするぞ」
カズマがそう言って深呼吸だ深く息を吸ってゆっくりと吐け、とアドバイスをくれた。繰り返すとだんだん思考がクリアになってきた。
あ、そういや俺は男だったわ。いや、でも双子、だなあ。
「その認識でいいと思います」
「俺たちは二卵性双生児みたいなものだよ」
あれ? また
「ナチュラルに心読んでない?」
「読んでます」「読んでるよ」
俺の心筒抜け事案!
「好きじゃないヒトの心なんてふつうは読みませんよ」
「そうだそうだ! トウサマの心だから勝手に読むんだぞ!」
シロは俺の目を見つめて、クロは右手を拳にして突き上げて言った。
「俺の事を、そんなに信用してくれていたのか……!」
ふたりを抱き寄せ、よしっ、今日はいい肉を買ってこよう! と決意したら
「お金が必要だったらトウサマに頼むしか無いからなー」
「フミさんがお外で稼いで来てくれないと生きていけませんからね……」
との呟きが耳に入ってきた。キミら現金だね。
「「生きるためには必要なんです!」」
まーた、心読んで。でも、こう、何と言うかまたカネが足りなくなるな。養育費、くれないかなあ……。扶養がふたりに増えたんだし。ねえ、カアサマあ? そう思いながら俺は天井を見上げた。
天井から視線を落としてカズマに向け俺は握った両手を縦にぶんぶんと振りながら何度も何度も頭を下げた。
「カズマ……、来てくれてありがとう。マジでありがとう。お前が来てくれなかったら本当のシロとクロに出会えなかった。やはり予感は正しかったんだ……」
「フミさん」
カズマは握った手を強引に外してその手を俺の肩に置いて真面目な顔をした。
「それ、予知。多分だけど」
へ? 予知? 予知ってあれだよな、未来が分かるやつ。
「その表現で合っています。事後報告になってしまいます。ごめんなさい」
シロがしゅんと目尻を下げた。
いや、シロのせいじゃないだろ。俺がクソ
「アイツ云々は関係ないよ。トウサマは俺たちの使徒として登録されたって事だ」
使徒……、天使にも使徒っているのかあ。
「カミサマやら天使やらそういうのは脇に置いていい。ただ単純に俺たちを信仰の対象にする者になったんだよ。俺たち公認の、それも筆頭のね」
「それって、まさか。ね、ねえシロちゃん、クロちゃん。それってフミさんはアレってこと?」
カズマの言葉にふたりが同時に頷く。
アレってなんだよ! 気になるじゃねーか!
「フミさん」「トウサマ」
シロとクロは俺の脇にてててと走って
「「聖者就任、おめでと。でもいきなりでごめんなさい」」
そう言って俺の胴をぎゅっと抱きしめた。
聖者……、そう言う物もあるのか。
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