天使はふたりいた
「お前は、誰だ? あとシンクに座るな」
「ごめんごめんトウサマ。そっち行くから待ってて」
そう言ってぴょこんとシンクから飛び降りた”それ”は俺たちの方へゆっくりと歩いてきた。シロと同じ歩き方で。
「お前……、シロ……か?」
問うと、”それ”は頭をかいて言った。
「俺はシロでもある。だが、別な存在と認識してくれたほうがいい。名前はクロ。それがカアサマから貰った名前だ」
カズマの方をちらりと見ると目を何度も開けたり閉じたりしながら”それ”を、クロを見つめていた。
「じゃあ、クロ。シロは、どこにいる?」
「カリカリすんなって、ここにいるよ」
クロは胸を2,3度突っついた。
「生きているなら、いい。よくないが。それよりカアサマってあのメガミの事か?」
「そ。もっと早く俺が出て一緒に堕ちるはずだったのにカアサマの計画が狂いっぱなしだよ」
クロはケラケラと声だけで笑った。顔は笑ってなかった。
「計画、っていう、のは、フミさんが、シロちゃん、を、性的に、食べるって、事で、合って、いるかな?」
息を継ぎながらカズマがクロに質問を投げる。俺はじっとクロをみていた。上から下まで。これはこれで……。
「お? おお?? ドンピシャリ! いやあ、トウサマがアイツを甲斐甲斐しく世話しだして焦った焦った。でも、こうやって外に出られたのはあんたのおかげだぜ? えーっと、カズマ、だっけ? ああ、あんたは目で視るヒトか。俺を直視するのはきついだろ? でも目を逸らせない。ニンゲンってオモシロー」
クロは右へ左へ体を揺らしながら笑っていた。
「で、いつになったら、シロを、返してくれるんだ?」
一歩、また一歩と言葉を紡ぎながらクロと距離を詰める。
「おいおい、アイツは果報者だなあ。俺にかける言葉は無しかあ?」
クロの目の前で腰を落とし同じ目線で俺は手をそっととった。
「なら言うが、お前も俺の子にならないか? クロ」
「いいよ」
クロは素直に頷いた。そりゃもう即答って感じだった。
「カアサマは俺たちにさよならの一言もくれなかった。俺に与えれたのはエサになれって書かれた紙一枚だった、しね」
その言葉で俺の左右から食べようぜ! の大合唱が聞こえる。うるせえ。
「
胸を張るクロの姿がシロと重なる。
「「両手を出して」」
クロの両手が俺の左手をとる。そして、薄っすらとシロの両手が俺の右手をとる姿が見える。
頬を涙が伝う。
悲しみじゃ無い。今回は家族が増える嬉しみだ。
「おかえり、シロ。いらっしゃい、クロ」
手に力を入れるとふたりもぎゅっと握り返してくれた。
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