彼しか出ません
「はよっす」
出勤して自席でうんうん唸っていると友人αのカズマが声をかけてきた。コイツは天然モノのイケメンで女性陣からかなり人気があるのに俺なんかの友人筆頭をしているよくわからんヤツだ。
「ああ、おはようさん」
「フミさん。最近付き合い悪いけどなんかあったね(断定)」
「いや、何で断定なんだよ」
「だって散々貢いでいたカスミちゃんの所に全く顔だしてないじゃんか。カスミちゃん心配してたよ、もう知らないぞーっぷんぷんて」
「ああ。もう、いいんだ。俺には……。いや、何でも無い」
俺が再び唸り始めると
「あー、えっと胡散臭いかもしれないけど、さ。フミさんのオーラが変わった事と関係があったり?」
とか言い出した。
「え゛? カズマ、お前……。スピリチュアル系のニンゲンだったのか?」
「う、まあ。そうなんだ。オーラとか視えてさ」
「俺ってどんなオーラだった? 詳しく聞かせろ」
カズマの胸ぐらを掴み引き寄せて俺は言った。
「どんなって、ドス黒……、くは無いけど濁った桃色のオーラが、いろいろ巻きついていたよ。今は見違えるほど清々しい、いや神々しいけど」
「神々しい、か……」
シロの浄化パワーがすごすぎる件。
「フミさん、もしかして……」
「ん?」
「もしかしてカスミちゃんに貢ぐのやめてそっち系にお金を流し始めたとか? 詐欺が多いからやめたほうがいいよ」
でもこの変化は……、マジモンの能力者かも……、だったら俺も……とか顎に手を当てて呟く姿もイケメンだな。その成分少し俺によこせ。
「カズマ」
「なん?」
「女紹介してくれ」
「いや、カスミちゃんに会ってあげたら?」
「カスミちゃんか。正直俺の友人で女性ってカスミちゃんくらいしかいねーんだよなあ……。あ、口に出すとなんかへこむわ」
うーん……。相談、カズマに相談すっかあ。そう言う世界に明るいかもしれん。
「カズマ、明日は土曜だが休日出勤するか?」
「んにゃ。予定にはないよ」
「じゃあウチに来い。すげーの見せてやる」
「うわっ、俺まで引き込む気か。これは本格的にアレだな……。でも本物なら……」
ぶつぶつと呟く姿もが様になるってホント凶器だな。爆ぜろ。
「とりあえず、来りゃ解る。家は変わってないからな」
「え? あそこにまだ住んでんのか? あのボロに?」
「ああ、今は天国だぞ。トイレは未だに共同だけど」
なんで部屋に風呂が付いててトイレが付いてないのか謎なんだよなあ。家賃が安いからいいけど。
「……天国?」
「ああ。そんなこんなで始業だ。ホイ、席に戻れ戻れ」
呆けているカズマを押し出して仕事を始める。
仕事をしながら”コイツが来ればこの物語が進む”そんな予感がしてならなかった。
その日の仕事はつつがなく終わり、次の日。土曜日。
「フミさん……。俺、目が痛いですよ」
ウチにやってきてシロを見たカズマの第一声がこれだった。
「カズマ、お前から見てシロはどう見える?」
「オーラの質がやばい。量もやばい。この子って人間じゃない、よな? もしかして、フミさんと上位人の子供とか?」
「俺の血は入ってない。だが俺の子で間違いないぞ。言うなれば養子だ、養子。あとシロはカミサマだ」
「マジで言ってる?」
「マジもマジ」
「詳しく。詳しく聞いてもいいか? と言うか、話してオナシャス」
俺は頷き、シロに外にいるから何かあったら声をかけてと言って扉を閉め、壁にもたれて会話を再開した。
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