「あ、わたしも手伝うよ。いつでも呼んで」
「ただいまー」
「おじゃましまーす」
「おじゃまする」
アリカタが玄関を開けるとレンリがセナとハシュカと一緒に立っていた。
「たびたび愛の巣に来てごめんねー。あ、これおみや」
「私からはコレだ」
セナから渡されたのはクッキーの詰め合わせだった。ハシュカは何も持っておらずアリカタの手をさっと取ろうとしてレンリにはたき落とされた。
「がるる……」
「むう。行けると思ったのだがな」
「ハシュちゃん。そろそろ自分の
「いやいや、まだ主従なんで」
「アリ。お前はわたしのぜんぶを見てまだ主従というのか?」
その言葉にセナは口を覆いふるふると揺れた。ハシュカは目を細めて冷ややかにアリカタを見た。
「レンちゃん……。レンちゃんが、おとなになったっ……!」
「コレがロリコン」
「いや、んー。まあひとつの階段は登ったな。うん。まあ、アリはロリコンでどMだな」
レンリの余計なフォローにアリカタは頭を抱えそうになった。
「お嬢、誤解を招く言い方はちょっと……」
「なんだよアリ。わたしをぜんぶ見ただろ? 上から下まで」
腰に両手を当てて胸を張るレンリ。服の下から主張する胸に目が行きそうになったアリカタだったがセナとハシュカがいる手前視線をそちらに向けられない。
未だに口に手を当ててぷるぷる震えるセナと目を細めてじっとアリカタを見つめるハシュカ、鼻息を荒く胸を張るレンリへパンパンと手を叩いて奥へと誘導した。
「お嬢、いつまでもお客さんを玄関に放って置くのはいけません。靴を脱いで。ハイ。入りましょう。」
「「「はーい」」」
この子らって一応成人に近いんだよなあなどと思いつつアリカタはセナから受け取ったクッキーとジャスミンティーを出しソファーで雑談するさんにんから離れた。
その姿をレンリとハシュカはちらちらと横目で見てセナはそのレンリの姿を横目で見ると言う変な構図が出来上がっていた。
突然セナとハシュカの方へ振り向いたレンリは小声で相談を持ちかけた。
「セナ、ハシュカ。わたしって魅力ないかな」
「レンちゃんに魅力がなかったらセナには皆無だよ」
「私も同感」
「……、一緒にお風呂入っているだけで襲われないのはおかしい」
その告白にセナはまた口に手を当てた。そして小声で叫んだ。
「レンちゃん! レンちゃんから襲っちゃえばいいよ!」
ハシュカも目を見開いて口をぽかんと開けた。
「今の話、本当?」
「うん。入っているのに襲われないのはおかしい」
レンリはちらりとアリカタを確認して
「でも、わたしからってはしたなくない?」
と小さくなった。
「もう結婚するんだし大丈夫だよ。あ、ちゃんと避妊しないとだめだよ」
「でも、でも……」
そう言いつつ身体をさらに小さくするレンリを見てセナは目を見開いた。
「あのワイルドなレンちゃんがこんな乙女に……。恋のちからってすごい」
「やはり私も
ハシュカはあれやこれやと呟いて自分の世界に入っていた。
セナは興奮してはいたが大声は出さずにレンリとのヒミツの会合を続けていた。
アリカタがジャスミンティーを継ぎ足しに来た時は他愛もない会話に切り替えられるほど興奮した状態で冷静だった。
ハシュカはひとり自分の世界で理想の
「ハシュちゃん。ふたりで
背を叩かれたハシュカはようやく自分の世界から這い出てセナの手をとって上下に振った。
「セナ。あなたとなら良い
「あ、わたしも手伝うよ。いつでも呼んで」
「レンちゃん。自分だけの
手をわきわきと動かしたセナがレンリへと襲いかかる。結果ははじめから分かっているがそれでもそういうお約束である。
そんなふたりを微笑んで見ていたハシュカは飛んできたセナに押しつぶされて気絶した。
ハシュカが目を覚ますとレンリに膝枕されておりセナが心配そうに覗き込んでいた。
「ごめんハシュカ。飛ばす向きを間違えた」
ハシュカはレンリの頬に手を当てて小さく呟いた。
「手加減、衰えてる」
「まじ?」
「あっ! だからいつもより飛んだんだあ!」
あっけらかんとセナは叫んだ。手加減の甘い状態の蹴りを食らってぴんぴんしているセナの身体は頑丈なのだった。
その輪の外で右へ左へうろうろと動くアリカタは一部始終を見ていなかった事に自責の念を感じていた。
(年頃のオンナノコが気絶。しかも男がいる部屋で。事案になってしまう!)
どう頑張ってもアリカタが考えるほどの事は起きないであろう。アリカタが飛びかかってもレンリとセナに一蹴されて終わりである。
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