「いや、お嬢がピンクドットのおぱんつを俺に見せて……」
アリカタは天蓋付きの大きなベッドを前に正座をしていた。目の前では最近知り合った女の子が大胆にポーズを決めている。
「俺はロリコンじゃない。俺はロリコンじゃない」
自分の呟きにエコーがかかり壁で反射され増幅をして耳に返ってくる。
目の前の女の子はゆっくりとスカートめくりあげる。そこにはなんだか見覚えのあるピンクドットのおぱんつが……。
「うわああああ!!!」
叫び声と共に目覚めて見えたのは白い天井だった。左右に首を振るとなんだか枕が温く柔らかい。
「ここは、俺の部屋……。部屋、か。変な夢見た」
アリカタは荷解きの済んでいないダンボールに囲まれた布団に寝かされていた。
「俺は、お嬢が好きなのか? お嬢とそう言う関係になりたい? いやいや、まだ会って数日だぞ。俺がマゾと言う事もありえる。ありえる?」
うーん、と頭を捻っていると頭の向こうから声が入った。
「どんな夢見てたのか言ってご覧なさい」
「いや、お嬢がピンクドットのおぱんつを俺に見せて……」
「へー、ふー、ほーん」
アリカタの背に冷たい物が走った。
「れ、レンリお嬢様? いらっしゃるので?」
「いる。もちろんじゃない」
寝た状態にあるアリカタの顔の上にレンリの顔が覆いふさがった。その顔は満面の笑みだった。
「いつ、どこで、わたしの下着をみたのか。じっくり聞かせて貰おうか。ああ、最初に蹴った時と着けていた柄が違う物の様だし、本当に」
どこで見たんだ? んん? そう低く吠えてレンリはアリカタのネクタイを持って首を吊り上げた。
「正直に! 正直に言います! 先ほど偶然見えたんです。本当に、偶然です! 信じてください!」
「ほーん、偶然見た物が夢に出るくらい意識してるってコトか。クソアリ。おまえはわたしをなめているな?」
アリカタは再び蹴られる覚悟をした。しかし、レンリから蹴りは飛んでこなかった。代わりにレンリはアリカタの額に自分の額をこつんと打ち付けて言った。
「わたしと、おんなじだ」
それは今までのレンリの口調とは違う見たままの少女の口調だった。
「えっ……」
「わたしは、一目惚れした。アリさん。あなたに」
レンリは額をくっつけたまま語りだした。
「最初に出会ったのは偶然見た履歴書。あなたの写真を見て。びびっときた」
本当に一目惚れなんてあるんだなって驚いたとレンリは額を擦り付けて言った。
「わたしは結婚相手を決める為に新入社員をあてがわれてた。優秀なやつばっかり。逆ハーでも良いぞとか言われてもぜんぜんピンとこなかった。パパやおじちゃんが選ぶのって筋肉がすごい人ばかりだったから」
優秀なんだけど毎日毎日筋肉の話しされると嫌になっちゃってさ、レンリはそう言いながらアリカタの頬を撫でた。
「わたしにも筋肉が強いのが遺伝してて。ごめん。何度も蹴って痛かったよね」
レンリの表情が少し曇った。逆さにその表情を見たアリカタは泣きそうな顔に見えた。
「お嬢。実は俺、蹴られた記憶があまり無いんだ。多分、飛んでる」
「えっ?」
アリカタの告白にレンリは目を丸くした。
「俺、緊張しいでさ。度を越すと意識が飛ぶんだよね」
アリカタはついでに記憶もと変な笑い顔をした。
「今まで気が付かなったけどマゾっぽい感じがするんだ。それにお嬢の蹴りは安心して受けられた」
「そ、それはもちろんあなたを思った蹴りだから。そう、思いのこもった蹴りだよ」
レンリは髪をいじりながらそっぽを向いた。
「お嬢が俺を選んだら。俺はどうなるんです?」
「どうにもならない。わたしの物だって正式に決まるだけ。それにアリにはもう捨てるものは、ないよね」
「……、やっぱり知ってるんだ」
「もちろん。好きな人の事はなんでも、じゃないけど知ってるつもり」
レンリの胸が主張してアリカタの視線が泳ぐ。
「アリ。見て、いいよ。あなただけ」
レンリはアリカタの耳にそう囁いてそのまま唇を落とした。
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