2人目 フリー・生物学者

前回の出会いから数日が経ち、以前からやり取りしていた人と会う約束をした。

過去のこともあるので、やはり会話はした方が良い。

何度か連絡を取り合ってお互いのことを確かめ合った。


やり取りの中で生き物が大好きで自然も好きだとのことだった。

周りにいないタイプだ。

ちょうどそのころ散歩にはまっていて、自然豊かなところで散歩したい気分だった。

趣味が合いそうだと思い、週末、会うことにした。


待ち合わせは、普段ほとんど行くことのない場所にした。

なかなか行かないところの方が、より楽しめると思ったからだ。

また、そこは相手の得意分野でもあった。

判断を相手に委ね、行きつけの駅に集合することになった。


時間通りに到着。

相手を探す。

目印は、赤いリュックにジーンズ。

どこだろう…

「この人だったら良いな」と思いながら探す。


発見した。

意外にも同じような服装をした人はおらず、ほんの数分で見つかった。

それでも間違えていないか、緊張しながら話しかける。


正解だった。

少し落胆した自分がいた。

電話の声色から勝手に見た目を想像していた自分に、だ。

「勝手に期待して、勝手に幻滅して申し訳ございません」

そう思いながら、この時間を楽しもうと作り笑いを浮かべる。


会話が続かない。

あ、そうだ、今日は相手の得意なものを教えてもらう日だった。

そう思い出し、湖のある公園に向かった。

(2回連続公園なのはたまたまで公園好きなわけではない)


着いたとたん、相手が急に饒舌になった。

こんなにも人は変わるのか。

表情もくるくる違う様相を見せ、とても興味深かった。

知らない生物の話や、好きなどじょうの話をしてくれた。


「自分なんてにわかなので、本当に好きな人からしたらまだまだですよ」


と照れながら話す相手に、「いや十分ですよ」と心の中で突っ込みを入れていた。


結局、2時間ほど広い園内を公園した中で一番長かったのは

水辺の近くでぼーっとしていた時間だった。

丁寧な力説つきで、かれこれ1時間は同じところに立っていたと思う。

なかなか面白い時間だった。


「また会いましょう」


そう言って別れ、そのあと二度と会うことはなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る