1人目 バツイチ子持ち

 マッチングアプリを再開してから、まだ誰とも会っていない。

警戒してやり取りを長く続けていたら、いつの間にか2か月が経過していた。

これ以上吟味する必要があるのか。

真剣に交際相手や結婚相手を探しているわけでもなく、ただの暇つぶしなのに。


 そろそろ誰かと会ってみよう。

 そう決意した翌日のことだった。


「うちの家、この近くなんだよね」

健全な公園デートだと思っていたのになんだか残念に感じた。

いや、考えすぎか。

そもそも健全ってなんだ。

アプリで知り合って、翌日に会う時点で健全さのかけらもないのではないか。

そうは言っても散歩のつもりで来たんだよな。

様子を見て、もっと知りたいと思えばそれもありかもしれない、そう感じた。


 彼はバツイチで子持ちだった。

そんな人、世の中にはたくさんいるだろうし、むしろ今どき、離婚の経験がない方が珍しいぐらいだとも思った。

ご兄弟の話、なぜマッチングアプリに登録したのか、離婚の理由、お子さんとの関係など、赤裸々に話してくれた。

セックスの話もそうだ。

付き合うにしても相性が良くないと続かないとの自論に納得した。

それがとりあえず「家来ない?」につながった。


結局、必要性を感じず、昼間の陽気ただよう公園の真ん中で

お互いの好きな体位だとか性癖や恋愛嗜好の話をして

幸せになりましょうね、と言ってその場を離れた。

自分自身、あんなに話が盛り上がるとは思ってもみなかった。


あの時間はなんだったんだろう。

今でも思い起こすことがある。

でもきっと、今なら違う選択をしただろうと思い、少し後悔している。




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