後輩が、かき氷屋でバイトしていた。

 姪っ子一家と一緒では、市民プールを満喫とはいかない。

 今年の夏は、ほとんど姪っ子たちと行動をともにしていた。

 せっかく感染症も遠ざかり、今年こそ彼女を作る予定だったのに。

 かといって、ナンパするような体力も猛暑で削り落とされる。


 温水プールなので、半分お風呂気分で浸かった。


「は~あ」

 

 このまま、生ぬるく夏も終わっていくのだろう。


 かき氷でも食べよう。


 しかし、台湾かき氷は行列ができていて、皮膚が乾燥してしまいそうだ。


 あっちの普通のやつにしよう。


「ちーちゃん、かき氷食べよ」


「うん! おにいちゃん肩車して」


「はいよ。よっこらせ」


 方に乗せるにはやや重すぎる姪っ子を肩車して、かき氷屋さんへ。


「いらっしゃいま……センパイ?」


「あれ、ワカナ?」

 

 ボクの後輩が、かき氷屋さんでバイトをしていた。

 文化系には似つかわしくない、サングラスを頭に引っ掛けている。

 ホットパンツからは、水着がはみ出ていた。ヒモ&ストライプか。


「あ、なに、に、しま、しょ?」


 カタトコになった状態で、オーダーを聞いてくる。


「なにがいい、ちーちゃん?」


「いちご!」


「じゃあ、いちごとメロン、一つずつ」


「はい、四〇〇円です」

 

 首にぶら下がっている、防水袋に包んだスマホで、お金を払う。


「バイト始めたんだ?」


「夏の間だけです。新刊を買うのに、お金がなくてですね」


「そうか。大変だな。お客も、あっちに取られちゃって」


 台湾かき氷のお店に、ボクは視線をむけた。


「ああ、あっちはあっちで繁盛しすぎて大変なんです。人の入れ替わりが激しいんですよ。こっちは立っているだけでいいんで、気楽です」


「そっか。ボクは好きなんだけど」


「ふえ!?」


 ワカナの手が、なぜか止まった。


「かき氷がね! この昭和レトロいいじゃん! 今どき鉄製ってさ。このノボリも、昭和って感じがして」


「わかります。センパイ昭和初期のミステリばっかり読んでますもんね?」


「あははー。大好きだ! あははー」


 ワカナが、「はいどうぞ」と、かき氷を二つ差し出す。


「ありがとう。かわいい」


「ふえ!?」


 またワカナの手が、ひとりでに止まる。


「かき氷がね! 昭和なのにがんばっててかわいいって!」



「ま、まいど、ありがとうございます。おじょうちゃんも、ありがとうね」


 ちーちゃんが、「ばいばーい」と、ワカナに手を振る。


 パラソルのあるテーブルに座って、かき氷をかきこむ。

 

「おにーちゃん、今の人、かのじょ?」


「ち、違うぞ。ちーちゃん! メロンひとくちあげるから、しーな、しー」


「しー」


 ちーちゃんは口に指を当てる。わかっているのか、いないのか。

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