イケ女のエプロン姿って、興奮するよね
まな板をトントンする音で、俺は布団から起き上がる。
「お、起きたか」
目を覚ますと、カエノが台所に立っていた。
ネギを切るたびに、制服のスカートが揺れる。
ピンクのエプロンは、おそらく自前だろう。おふくろはピンクなんて持ってないし、第一エプロンをしない。
ショートヘアに、ピンクのエプロンなんて超絶似合わないと思っていた。
なのに、案外しっくりきている。
制服にエプロンってだけでも、背徳感がすごいのに。
「もうすぐできるからな」
カエノが、卵焼きを丁寧に折りたたむ。焦げ目もちょうどよく、最高だ。
「な、なんだよ? あんまジロジロ見んなよ」
味噌汁をかき混ぜながら、カエノが恥ずかしがる。
「いや、なんでいるのかなって」
「おばさんが朝から仕事だって言うからさ、上がらせてもらった」
俺を起こしてやってくれって、電話が来たらしい。
「そっか。お前合鍵持っていたな」
お互いの家にトラブルが起きたとき用に、お互いに持たされたんだった。
「で、おばさん、朝飯を作る余裕がないってんで、あたしが代わりに」
「おう。そうだったか。ありがとな」
テーブルには、メモと一緒に千円札が置いてある。
おふくろが無理やり頼んだわけじゃない。カエノが自主的にやってくれたのか。
「いいって。できたぞ。冷めないうちに食えよ」
食卓に、カエノの料理が並ぶ。
卵焼きと味噌汁である。シンプルながら、ごちそうだ。
「メシは、おにぎりか茶碗で出すか、どっちがいい?」
「せっかくだから、おにぎり!」
「はいはい」
ホカホカのライスを手に乗せて、カエノが握っていく。
ギュギュっと抑え込む様は、女性ながら豪快だ。
「ほらよ」
「いただきます」
できたてのおにぎりを頬張った。
「はわわ。うっめえ」
「なんつー声出してんだよ?」
カエノが、ゲラゲラ笑う。
「だって、めちゃうまいんだって!」
「そうなのか?」
自分の分を、カエノも食う。
「ホントだ。我ながら最高だな」
「だろ? 味噌汁も卵焼きも、たまんねえ」
おにぎりを片手に箸であれこれつまむ。
実に行儀が悪い。
おにぎりを手放したくなくて、ついついこんな食べ方になってしまう。
「すまねえな。作らせちまって」
「放課後、埋め合わせしてくれよ。あたし、ラーメン食べたい」
ここでスイーツと言わずラーメンというあたり、カエノらしい。
「あたしだって一応女だしな。ラーメン屋に一人じゃ入りにくいんだよ」
「わかった。おごってやるよ」
俺は、テーブルの千円を指で摘んだ。
「わーい……おっと」
突然、カエノが俺に顔を近づけてきた。
お、なんだ朝からキスか? 大胆なやつだ。
と思っていたら、指にメシの粒を付けていた。
「口にメシが付いてたぞ」
「おう。悪いな」
カエノが、指についたご飯粒を口へ。
放課後、ラーメン屋で紙エプロンをするカエノを見て、俺はまた興奮してしまった。
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