いやああ。先輩の生足に挟まれちゃったうわああん

 チエ先輩が、頻繁に私の家へ遊びに来るようになった。

 といっても、小説の書き合いばかりだけど。

 今もチエ先輩は、私の対面でノートPCを広げている。


「これ、どうでしょう?」

「うんうん、どれどれ。いいじゃーんホラーと思わせてミステリとか、考えたね」

「えへへぇ」


 先輩がミステリ好きなので、興味を引いてみたのだ。

 

「さむっ。ねえシホちょっと足を挟ませて」


 先輩が、私に足を絡ませてきた。


 うわああ。先輩の体温……さむ!


「そういえば、先輩って最近、ミニが多いですね」

「だね。制服もミニにしてみたよ」


 寒くないのだろうか。

 私的には、生足の先輩が見られてうれしいのだが。

 

「でも、なんで今日はタイツじゃないんですか?」


 いつもは厚手のタイツを穿いて、防寒対策をしている。


「クラスメイトがお茶をこぼしてさあ。あたしの足にひっかけたんだよ」


 それで、タイツが台無しになったらしい。


「だから、タイツの代金を弁償させたよ。といっても、数百円だけど」


 とはいえ、先輩の足は少し冷たすぎるような。 

 

「ちょっと先輩、ひょっとして冷え性ですか?」

「そうなんだ。最近特にひどくて」

「運動したほうがいいですね」


足に血流が、行っていないのかもしれない。

 これでは、いくら温めるもムダだろう。

 

「あたしに言うかい?」


 チエ先輩は勉強ができる反面、運動が苦手だ。

 ボーイッシュな見た目をしているにも関わらず、男性らしい趣味は持たない。

 かけっこや重いものを持つ作業を頼まれるが、だいたい相手に後悔される。


「もう、ボーイッシュスタイルやめようかな。男子よけだったのに、迷惑かけてばかりだ」


 チエ先輩が、うなだれながら前髪をいじった。

 こういうときだけは、女のコっぽい。

 

「いいじゃないですか。男子に見られるからって男子っぽいことを要求する他人が悪いんですから」

「うれしいね。だからチエは好きなんだ」

「……っ!」


 私は、ついうっかりガラにもないことを話してしまった。


「うん。シホの言う通りだね。あたしも運動してみるよ。夕方の散歩くらいならワケないし」

「そうですね。健康のためな――」


 待てよ。

 私は、応援を思いとどまった。


 このまま先輩が健康になると、先輩が生足で私を挟んでくれなくなる。

 なんでこの事実に気が付かなかったんだ!


 なにか、なにか手はないのか……そうだ!

 

「私も付いていきます!」

「いいよ。帰り道逆じゃん」

「いいんです。マラソン大会も近いし、私も健康になりたいので!」

 

 こうして、私は健康を手に入れた。

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