恐怖の持ち物検査 風紀委員 VS ギャル
「ちょっとなんなのよ、これは!?」
私は、ギャルのメアが開けたカバンの中身を見て、指摘した。
メイク道具などのポーチがびっしり。
「学校にメイクの持ち込みは禁止のはずよ!」
「えーいいじゃーんヒヨリ」
「ヒヨリって呼ばない!」
私は、メアに怒鳴った。
「これくらいみんな持ってるから、いいじゃーん」
「よくないわよ! みんなメイクしていないでしょ!?」
「コンビニで、見た目だとわかんないやつを買ってんの。文房具にしか見えないよ」
どうだろうか。化粧なんてしたことないからよくわからない。
「それに、これは!」
私は、ロールケーキを掴む。
「えー。それ没収するかー?」
「するわよ! チョコの持ち込みもダメだって言ったわよね!?」
「普段食べるお菓子ならOKじゃん」
「でもこれは、明らかに誰かにあげるためよね!? こんなのダメよ!」
本校は、不純異性交遊なんて禁止だ。
「せっかく作ったのにさー」
「とにかく没収よ! 放課後、指導室に来なさい!」
「はーい」
まったく、メアは問題児なんだから!
放課後、私はメアを指導室に呼び出す。
正確には、指導室の隣りにある空き教室だが。
「こんなところに呼び出すとか、委員長、えっちだね」
「あんたを指導するには、ここがちょうどいいのよ」
私は、買ってきた二人分のお茶を、机に置く。
「手作りでしょ、これ?」
メアが持ってきたロールケーキを、私は持ち上げた。
傷まないように冷蔵庫で冷やしていたから、まだ冷たい。
「あんたにだよ」
「わかってるわよ。とにかく、ありがとうね」
私はロールケーキを一口いただく。
カトラリーなんて上品なものはないから、手づかみで。
「ちょ……恵方巻きみたいに食べるものじゃないから」
「だって、早く食べたかったんですもん。それに恵方巻タイプのロールケーキってあるのよ」
「マ!?」
他の女子たちも、チョコを持ってきていた。
恋人にあげる大本命や、思いを告げる本命。友だちに配るものなど。
そのどれも、私は没収していった。
そっちは普通に返却して、メアのロールケーキは「処分」の名目でここで食べることにしたのだ。
「家で渡せばいいでしょ? なんで持ち込むのよ?」
私とメアは近所に住んでいる。
渡そうと思えば、隣の家に行けばいいのだ。
「学校で渡さなかったら、あんた他の男子に言い寄られるじゃん!」
私を厳格な風紀委員長として振る舞わせて、男子をビビらせる作戦だったらしい。
「なんだってこんなことを」
「ヒヨリはモテるんだよ!? 隠れモテなの! 男子って案外、あんたみたいなのに怒られたいって思ってるんだから!」
「それはヤンデレの発想よ!? 私が男子になびくとでも!?」
「可能性があるだけでもヤなの!」
まったく、メアは問題児なんだから!
「食べ切れそうにないわ。あんたも食べてよ」
「わかった。こっちから食べるね」
私と向かい合わせになって、メアはロールケーキをかじる。
二人分のお茶を買ったのに、なぜかメアは私が飲んでいるお茶に手を伸ばす。
「ちょっと、あんたのお茶はそっちにあるでしょうが」
「ええ、いいじゃん」
いいけど。
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