いやああ。先輩がニーハイを穿いてきたうわああん

 今日は、先輩とおでかけだ。


 欲しいミステリの新刊が出たらしい。

 わたしも、付き添いでご一緒することになった。

 

「おまたせ、待った?」

「大丈夫で……ほわああああ!」


 ミニスカートにニーハイって! チエ先輩のニーハイ!

 普段ボーイッシュな先輩が、白いニーハイを穿いてくるなんて!


「変かな?」

「似合ってます!」


 合わせている、グレーのニット帽もカワイイ。

   

 いつも「マニッシュ」っていうのかな?

 とにかくボーイッシュな感じだから、勝手が違うよお。


「でも、メンズライクにはしないんですね?」

「あれは『カレシの服を借りている』ってニュアンスらしいよ。あたしには合わないよ」


 たしかに。男性の服を合わせてコーデするらしいし。

 男性の匂いがするのは、ちょっとイヤかな?


「交際している男性もいないし」

「そうなんですね。先輩、モテそうなのに」

「いやいや。女子ウケは多少するけどね。バレンタインも、もらうばっかりかな」

「先輩は、チョコをあげたりはしないんですか?」


 デパート一階の、チョコ売り場を二人でうろつく。

 

「あたしは、やっすい友チョコとかバラまくタイプ」

「同じです! クッキーとかならケンカにならないから、自分で作ってその場で配るんです!」

「あー。作ってくるのかぁ。それもアリだなぁ」


 なんか、先輩が考え込んでしまった。


「とにかく、本屋さんへ行きましょう。我々は文芸部ですから!」


 最上階にある、書店へGO。


「何を買うんですか?」

「毒入りのチョコで人を魅了する、日常の謎もの」

「毒殺するなら、日常の謎ではないのでは?

「殺人ものではないよ。なんでも、媚薬入りらしいんだ」


依頼人の交際相手が、後輩の手作りチョコを食べた瞬間、その後輩を好きになってしまう。

 その謎を解き明かすため、探偵が赴くという話である。


「ネットでは出題編だけしか公開されなくて、読者への挑戦状になっているんだ。解答は、書籍にしかない」

「それは、手に入れないとですね」


 本を買ったあと、わたしたちはカフェへ。


 わたしは、チョコソースのフラペチーノをおごってもらった。


「ありがとうございます。すっごいおいしいです。飲んでみたかったんですよ」

「喜んでもらえてうれしいよ」

 

 甘くて白いホイップクリームが、苦いコーヒーの上に乗っている。

 白い先輩のニーソに、意識が向いてしまった。

 慌てて、話題を変える。

 

「たしか、元々チョコって媚薬として開発されたんですよね? 味もスパイシーだったとか」

「うん。薬だったらしいね。詳しいじゃん」

「ラノベの聞きかじりです」


 カフェで一服したあと、帰ることに。


「今日はありがとう。シホと遊ぶから、思い切ってイメチェンしたんだけど、変だった?」

「とんでもない! そんな先輩が、好きですよ!」

「ありがと……あっそうか!」


 先輩は、買ったばかりの本をめくって愕然となった。

 どうやら、結末が予想できたらしい。


「やっぱり、単に『この味が好き』って意味だったかー。そんなオチだろうと思ったんだよなぁ」


 わたし、結構ガチめに「好き」って言ったんだけどなぁ。

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