いやああ。先輩がおそろいのツインテールになったうわああん
修学旅行から帰ってきた先輩が、ツインテールになっていた。
「チエ先輩、その髪型は!?」
「どうだいシホ? 似合うかな?」
ショートカットでムリにツインテにしているから、いわゆるピッグテールになっている。
「どどど、どうしちゃったんですか? いつものクールビューティな先輩はどこへ?」
「それがさぁ、罰ゲームで」
クラスメイトの方とババ抜きをして、最下位になってしまったらしい。
「罰ゲームの内容が、ツインテになることだったんですか?」
「一番似合わない髪型で登校しなさいって」
ツインテールのままで、授業も受けたらしい。
「あたしなんて、まだいいほうさ。モヒカンって案もあったんだから」
それは、もはやギャグの世界だ。
同級生さんたちも同じことを思ったらしく、ツインテでまとまったという。
「チエ先輩、意外と賭け事に弱いんですね」
「眠くて、やる気がなかったからね。ずっと小説の取材をしていたから」
物書き志望の先輩にとって、修学旅行先は取材しに行くところで、青春を謳歌する場所ではなかった。
人によっては、寂しい人生だなーと思うかもしれない。
だけど、わたしには誇らしかった。このプロフェッショナルなスピリッツよ。
「ダサいだろ、シホ? あたしガサツで男子っぽくて。こんなさ、女のコらしい髪型なんてしたことなくってさ」
髪をいじりながら、先輩が困った顔をする。
「いえいえ。カワイイと思います。いつもと違う感じで、ステキですよ」
だって、今だってドキドキしているもの。
「お世辞はよしてくれよ」
「とんでもない。お世辞なんかじゃありませんよ。だってほら」
わたしは、先輩に自分のツインテを見せる。
ボブなので、短めのツインテを。
「わたしとお揃いにしてくれたってだけで、十分うれしいんで!」
「そうか。ありがとうな、シホ」
チエ先輩も、まんざらでもないみたい。
「はい。おみやげ」
「えっ。これ」
先輩がわたしにくれたのは、ゴムの髪留めだ。
しかも、先輩が今つけているツインテのゴムと色違い!
「髪留めまで、揃えてくださるおつもりで?」
「イヤだったかな。比較されちゃってさ」
「ありがとうございます! わあい!」
めちゃくちゃうれしい。
今日ほど、ツインテールにしてよかったって思ったことないよ!
最高の一日じゃないか!
「じゃ、写真撮ろうよ。あたし、ずっと恥ずかしかったんだけど、シホと一緒なら克服できそう」
「わかりました。たまに、一緒の髪型にしましょうよ!」
「しょっちゅうは困るなぁ」
写真に並ぶ先輩の顔は、心なしか困り顔だった。
こんな先輩も、いいなぁ。
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