雪だるま型アイスの顔、どっちが食べるかじゃんけん モーレツ甘太郎《かんたろう》 VS ヨッパライおねえさん

かんちゃーん、コンビニ行こ!」


 また今日も、近所のスズカお姉さんが遊びに来た。

 

「寒いっつーの。何しに行くの? お酒切らした?」

「アイス」


 この寒いのに、アイスって。


「あのね。だるま大福のコンビニ限定商品が欲しいの」


 あっ、それ気にしていたヤツだ。


 食べてみたかったんだよ。


「じゃあ、一緒に行こうか」

「わかった。でもその格好で行くの?」


 今日の格好は、タートルネックのセーターである。しかし、半袖だ。

 肩とか出して、寒くないのかな?

 下はホットパンツとタイツだし。


「コート羽織んなきゃ。ちょっと待ってて」


 スズカお姉さんが、クリーム色のロングコートを着る。


「おまたせ。コスしてるとね、脱ぎやすい服をいつい選んじゃって」


 スズカお姉さんは大学時代、母がいたコスプレサークルの後輩だった。

 今でもコスプレ仲間である。


 

 手をつないで、一緒にコンビニへ。


「これこれ」


 大福が、雪だるまの顔になっていた。

 シュールだが、めちゃツボる。


「他にも好きなお菓子買っていいからねー」


 そう言って、スズカお姉さんはハイボールの缶と柿の種をカゴへ入れる。


 適当な駄菓子を買って帰った。


 こたつでアイスか。

 なんて、背徳的なんだ!


「ねえ、どっちを食べるかじゃんけんしようか?」


 大福のようなオッパイをこたつに乗せて、スズカお姉さんが尋ねてきた。


「断然、顔でしょ!」


 顔は、板チョコで作られている。

 大福にチョコの甘みが加わって、きっとうまいはずだ。

 

「やっぱ顔狙いかー。じゃあ、じゃーんけーん」


 ぽい。


「ぐほお!?」

「どうしたの?」


 オレは何も出せず、モーレツに鼻を押さえた。

 

「な、なんでもない!」


 いや、なんでもはあった。


 半袖セーターのスキマから、胸が……。


「わーい。パーだね。じゃあ、お顔もーらい」


「えっ!?」


 しまった。ボクは「パー」で顔を隠しちゃったんだ!


 スズカお姉さんが、雪だるまの胴体を切る。

 

 ああ、顔が取られてしまう。


「うーん、でもいいかなぁ」


 勝ったのに、お姉さんは白い胴体の方を取った。


「お姉さん?」


「これで、よしと。お顔できあがりー」


 お姉さんが、柿の種を乗せて雪だるまに顔を作った。


「ああ、オレもやる!」


「顔はいいの?」


「いい! 顔のチョコもお姉さんと半分こで!」


 オレは雪だるまの顔を取る。

 駄菓子で顔を作り直す。


 味はちょっとしょっぱかった。

 けど、甘いと辛いが混ざって最強に近づいた気がするぞ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る