第5話 紅茶が冷めてしまうまで
自分で思っていたよりも疲れていたのか、翌日は昼前になってやっと目が覚めた。眠気覚ましに熱いシャワーを浴びて、パスタを茹でて朝ご飯兼昼ご飯に食べた。その日はたまった洗濯をしたり、読みかけの小説を読んだりして過ごした。
夜、熱い紅茶を飲みながらスマートフォンでネットニュースを眺めていると、着信があった。突然震えだしたスマートフォンに驚いて、着信番号も碌に確認せずに通話ボタンを押してしまった。
「もしもし」
「もしもし、浅生さん?急に電話してごめんなさい。今、大丈夫でしたか」
ほんの数秒、声の主を記憶の中で照らし合わせて佐藤さんかと納得する。
「夕べはちゃんと帰れたかなと思って。随分疲れてたように見えたから。メッセージ一応送ったんだけど返信がなかったから心配になってね」
「すみません、気がつきませんでした」
「いや、無事に帰れたのならいいんだ。俺の方こそ急に電話なんかしてしまって申し訳ない」
いいえ、と短く答えると少しの間お互いに沈黙してしまった。
「えっと、浅生さんは、休日は普段は何をして過ごされるんですか」
突然の質問に戸惑ってしまう。咄嗟に頭の中で模範解答を探してしまうが、これは面接試験でも何でもないことを思い出す。
「本を読んだり、部屋の掃除をしたり、ですかね」
「そっか、俺も本読むの結構好きなんだ。今度、面白い本とか是非教えてください」
じゃあまた、と簡単な挨拶をすると通話は終了した。
深く息を吐きベッドにもたれかかる。紅茶を飲んでいる途中だったことを思い出して身体を起こす。マグカップを手に取り、残っていた紅茶を口に流し込んだ。
「冷たい」
空になったマグカップをシンクに置いて布団に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます