一秒の空箱

N0ア

夢の光

サンタクロースは良い子にプレゼントをする。それに疑問を持つトントゥはいなかった。皆、言われた通りにサンタクロースを手伝う。子供が欲しがるおもちゃの現地調査であったり、おもちゃの作成であったりと淡々と仕事をこなす。しかし私は、違和感を覚えた。

皆平等に与えらるべきプレゼントに差異がある。確かに好みは子供によって違う。車が好きな子供もいれば、ぬいぐるみが好きな子供もいる。それは問題ではない。プレゼントの物の使用時間。これが一番大きな差異を作る。小さくなった洋服などでもない限り、それはあまりに悲しい。プレゼントを貰った瞬間は嬉しくても、やがては飽きてしまう。そんな使い捨てのプレゼントを子供たちにあげるのは、私は賛同できない。サンタクロースにも相談したが、彼は私の意見に賛同しなかった。

「私はただ、「クリスマス」に子供達を夢と笑顔をプレゼントするのだよ」

子供たちに夢と笑顔をプレゼントする。それが光栄であることに、異論はない。だが、その笑顔と夢は一時的であるべきではないと思う。子供たちが育つにつれ、サンタクロースを信じる子供たちが少なくなるのだ。夢は崩れていき、やがて笑顔が少なくって行く。ずっと思い出に残るような夢を、私は届けたいのだ。

持てる弱い力でできることを考えた。物も作れない私にできることは少ない。そこで小さな空箱をたくさん集めた。とても些細ではあるが私なりに記憶に残る、夢と笑顔をプレゼント出来る方法を思いついた。空の箱に、光の粒子を閉じ込める。箱を空ければ、砂一粒が落ちる時の間を、粒子は照らす。弱い力では、こんなに短い時間しか光らすことができない。それでも、私はこの体験をプレゼントしたい。夢を捨てないで欲しい。ただそう伝えるために。

暗い部屋、箱が開かれる。瞬く間に、消えた光を少年は見た。彼が貰ったただ一つの空箱。彼がその軽さを忘れることはなかった。

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一秒の空箱 N0ア @NoaF

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