d.親友との距離感はこれぐらい
「だからさあ、ああいう笑顔にだよ。サラは人が良過ぎるから、ああいう表の顔にコロッと騙されそう。」
「…あのね、好華ちゃん。私にだって、好みがあるんだよ。彼はイケメンかもしれないけど、私は別にイケメン好きでも何でもないからね。」
高校でできた親友に、騙されそうだから気を付けるように、忠告された私。…いやいや、おかしいでしょ。何故、私が騙される前提なの?…然も同級生の高峰君を、例えてまで。
「そう言うけど、サラは告白されたら本気で、どうしようとか考えそう。騙されるとか、考えてないよね?」
「…いや、流石に…それはないよ。今の例えで…彼に告白される可能性は、ゼロだもん。例えそうなっても、先ず冗談だと疑うし…。私みたいな地味女に、彼みたいなイケメンは告白しないから。」
……う~ん。何で告白前提の話に、なるのかな?…大して仲が良いと言えない高峰君が、私に告白する理由が全くないんだよ…。好華ちゃんに…という例えならば、十分に理解出来るのに。どうして私の話に、彼を登場させるのか…。
そういう状況には絶対にならないと、私は力一杯力説する。いくら恋を知らない私でも、告白されたから即本気にすると思うのは、大間違いだよ。偶に彼女の言い分は、仲の良い私にも理解出来ない時がある。どう見ていたら、私と彼がそういう設定になるのかな…。私に告白する例えの前提にされたと知ったら、高峰君もいい迷惑だと思うよね…。
「サラは自己評価が、低すぎだよ。サラのお姉さんが、超美人なのは私も認めるけど、あのお姉さんと比べられたら、流石にキツいよね…。だけどサラは、もっと自信を持っても良いんだよっ!」
「……別に、そういうのじゃないよ。お姉ちゃんを羨ましいと思った時期もあるけど、別にいじけたり捻くれたり凹んだりは、してないよ。お姉ちゃんはお姉ちゃんだと思うし、私は私だと思ってる。」
「…う~ん、そういう意味じゃないけど…。でも、まあいいかあ…。今は何を言っても、きっと分からないと思うし~。」
「………」
…もう、何なのだ…。好華ちゃんは言うだけ言って、自己完結した。彼女が何を言いたかったのか、今の私には理解出来そうにない。そういう意味じゃないのなら、どういう意味なのよ…と思うけど、彼女が別に嫌みを言ったのではないと、其れだけは私も分かっている。
彼女なりに私を、心配してくれているのだろう。マスクをして距離を置いての会話では、内緒話も無理がある。これでも教室の隅の方で、コソコソと話をしているけど、少しでも近い距離に居る生徒には、丸聞こえになってしまう。今の時間はまだ登校した生徒も少なく、其々のグループが教室の角を陣取り、会話中だ。これだけ距離が離れていれば、高峰君本人に聞こえない筈だけど、一応は名前は出さないように気を付けて。
…えっ?…まさか、聞こえてないよね…。何となく、彼の悪口を言った訳でもないのに、目を逸らしてしまった。…わあ、今の私って、凄く…感じ悪いよね?
そう思いつつも確認しようと、チラッと彼を盗み見れば、彼も偶然チラッと此方を見て、視線が合ったような……。慌ててパッと目を逸らした私は、もう一度確認する気になれず…。また彼と目が合えば居心地が悪いと思うのは、私の気にし過ぎだろう。彼がまだ見ている筈もないし、また彼は何とも思わない可能性もあるのに。何故か勇気が出なくて…。その後、意識的に見ないようにしていた私だけど、いつの間にかそういう事実さえも忘れ、気にならなくなっていた。
今日は、クラスの生徒達も半分以上が登校していた。クラス全生徒は登校していないものの、入学式以降で一番出席者が多い。私は基本的に男子とは、会話するどころか挨拶さえしない。高峰君が挨拶してくれなければ、男子との接点は全くないだろう。私にとって今の彼は、不思議な存在でしかなく…。
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「サラちゃんって、男子は苦手?…クラスの男子と話しているところを、一度も見たことないよね?」
「…うん、そうだね。…苦手なのかも。」
食事の最中に、
『
祖先達が外国人だったとしても、その外国人の祖先達も既に日本に住んで居た、移住者だったらしい。日本に住んで居た外国人と日本人が出逢い、恋愛結婚をしたということだ。そして今もその子孫は、日本に住み続けている訳である。
彼女の名前が外国人風の名前なのも、態とそうしたらしい。彼女の髪の色は、金髪ではなく明るい茶髪の髪色で、黒色より薄い灰色の瞳に、鼻もすっと高く外国人風の顔立ちだ。但し彼女は、可愛らしい名前からは想像できないぐらい、背がすらりと高くて手足もスッと長く、典型的な日本人の私とは真逆だった。好華ちゃんもそれなりに背は高いけど、希空ちゃんには勝てない。
「サラは昔から、苦手なのだよ。昔、男子に遊ばれたからね。」
「……ちょっと!…カルラはまた、変な言い方して…。もう何年も日本に住んで居るんだから、もう少し真面な日本語を話してよ…。」
私達の会話に割り込むのは、『カルラ・神代』と…否、『神代 カルラ』と言うべきか…。『神代』は、私の父の実家・神代家のことである。カルラは、私の父親の姪に当たる人物なので、私とは
カルラの母親は、正真正銘の外国人だ。私の叔父でもあるカルラ父は、仕事の関係で海外に出張することが多く、その頃に彼女の母親に一目惚れし結婚、何年かして家族を連れて帰国した。その時に初めて従姉妹として出会い、それからの付き合いとなるのだが……
カルラの母は未だに、日本語が下手だ。カルラ自身もおかしな風に日本語を覚えたようで、いくら従姉妹の私が正しい言葉を教えても、周りの人間が彼女の話し方を面白がる所為で、全く直りそうにない。皆にウケるのが嬉しくて、完全に間違った方向に向かうカルラは、冗談がウケたというようにご満悦だけど、周りの無責任な人物は、単に彼女を揶揄っただけだろう。
私の親友達はカルラとの会話に慣れているので、今も苦笑しただけだ。他にも教室でお弁当を食べている、他のグループの女子も居たけど、彼女達もカルラのこういうおかしな部分を知っており、会話が聞こえても全てスルーしてくれる。
…もう、カルラは本当に何を言い出すのか…。そういう言い方されたら、男漁りでもしていたとか、彼氏に振られて捨てられたとか、そういう目で見られることもあるんだよ…。男子達が教室に居なくて、良かった。
「メンゴ、メンゴ…だよ。サラ、すぐ怒る~。顔、怖いよ……」
「そういう風に
「……ブ~、ブ~、ブ~………」
……はあ~~。カルラの相手は、疲れる…。外国人として外国で幼少期を過ごして来たカルラは、半分が日本人という自覚がないのよね…。未だ外国人らしく、日本に住む外国人として、過ごしているのだろうな。カルラには決して悪気はなくて、外国人らしい陽気な気質だけなのだ。
『メンゴ』は、彼女流の『ごめんなさい』の意味だ。彼女自身では、ごめんなさいを略した気になっている。幾度『ゴメン』だと教えても、翌日には『メンゴ』に戻っていた。直す気ないだろ…と思わず睨めば、「顔が怖い」とその時の私の顔を、愚痴るようになった。
…いや、あの時の私は、怒ったんじゃなく呆れたんだよね…。それほど、怖い顔をした覚えもないのに…。
彼女が言う『ブ~』とは、ブーイングの略らしい。要するに、私に不満があると言いたいんだろう…。何を忠告してもこういう調子なので、私も今は諦めた。今後困るのは貴方だからね…と、そう思いつつ。
日本人と外国人の人数が、ほぼ変わらない状態のこの時代では、カルラが日本に住むことで困ることはないだろう。但し、社会人になり日本に住み続ける上で、ある程度の日本語をきちんと話せなくては、社会人として受け入れられない。日本の会社に入社するならば、余計に。
今は外資系の企業も沢山あるから、そういう会社に就職するならば、別に問題ないだろうが、日本人系の企業は未だ何世紀も変わらない、古い体質だ。特に神代家の家業を継ぐ気ならば、絶対に外国人気質は問題視されるだろう。
このように、カルラと私は気が合わない。ハーフの従姉妹の面倒を、私が見ている状態になっているけど、何故かカルラが私の後を追いかけてくるので、私はどうしようもない状況だ。…う~む。私が面倒を見ていれば大丈夫、そう思う叔父さん達に嵌められた気もするけど……
カルラは態々、私と同じこの高校を受けてまで、追い掛けてきたのよ。私に勝手に懐いているようで、正直私はいい迷惑なんだけどね…。まあ、私もつい従姉妹の面倒を見てしまうから、余計にダメなのかもしれない…。
カルラが此処に受かったのは、決して
『従姉妹』の私は姉でカルラは妹だと思えば、つい許しちゃう私も大概かも…。
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第4話です。また新たに、学校の友達たちが登場しています。
今回は新たに、女子生徒2人が初登場ですが、その内の1人は主人公の従姉妹という関係です。ちょっと癖ありな女子でして…。悪気はないので、主人公も気が合わないとしつつも、面倒を見てあげていると…。
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