第3話 インターンシップ
「あんまり口を開かないのはわかるけど、愛情表現がないと不安になる。もう別れよ歩…」
元カノが振り向いて向こうに去っていく。僕は追いかけていこうと思ったが、鎖でも繋がれたような気がして、なかなか前へ進められない。元カノは徐々に小さくなっていく。目から涙が溢れて、行かないで!と言いながら手を差し伸ばした。
「お客さま、大丈夫ですか?」
誰かの声が聞こえて、瞼を開けると、車掌の服装を着ている女性だった。周りをみてみると、他のお客様にじっと見つめられている。もしかしたら僕は夢を見てた?とようやく気づいてカアッと恥ずかしくなり、席から外してトイレに向かった。
僕はインターシップ先に向かうために新幹線に乗っている。でも、なんで今のタイミングに最悪の夢が現れるのか意味が分からない。さらに声を出してしまったので他のお客様に聞かれてしまった…。恥ずかしすぎて席に戻れない…。到着するまで出入り口の近くに立って過ごした。
駅に到着した。17時30分くらいにインターシップ先から送迎バスが来るだそうだ。僕は集合時間より早く来てしまったので、集合場所・巨大な時計台の近くに立って待った。夕方でも流石に暑い。ダラダラと汗をかきながらスマホをいじった。
10分後、学生服を着ている人がやってきた。もしかしたらこの人もインターシップに参加するだろう。でも僕はコミュ障なので話しかけられない…。もし違ったら恥ずかしい…。結局話しかけることなく、二人ともスマホをいじった。
30分後、キャリーバッグを運ぶ人がやってきた。30分後に来た人が口を開いて、10分後に来た人に話しかけた。横目から見ると盛り上がっていて、楽しそうだなと思いながらスマホをいじり続けた。その時、話しかけられた。
「君もインターシップに参加する?」
「あ、うんそうですね」
「マジか、いえーい俺たちは仲間だ!俺は青森から来たよ。幹太だ。君は?」
「歩です…広島から来ました」
「広島か、青森と比べて都会やろ!今日から3日間よろしくな!」
改めて登場人物を紹介する。
10分後に来た人は、昂良さん。おかっぱな髪型、メガネをかけている、痩せ型で賢そうな人。
30分後に来た人は、幹太さん。坊主に近いメンズの髪型、体型はぽっちゃり、優しそうし、積極的に行動する人。
昂良さんは幹太さんと話を始めた。二人の隣に僕がいるけど、わいわいと盛り上がっている中に僕が居ても良いという雰囲気ではなかった。気がまずいので、ここから少しだけ離れようと思った。そうしようと思ったが、幹太さんに呼び止められた。
「歩さん、趣味はなんだ?」
「え、僕の趣味?えーと、読書?」
「へぇ、読書かー。好きなジャンルは何?」
「全部好きけど、特に好きのは恋愛かな」
「そうなの?!俺も恋愛好きだわ。彼が彼女に彼の気持ちをわかってほしいと願いながら彼女と過ごす。そして、ようやく気づいてもらえるというシーンはめちゃ好きだ!!」
「あ…僕もそれ好き」
「わはは、恋愛好きな男がいて、俺は嬉しいだ!」
想像もしなかった展開がドンドンと開いていく。僕は幹太さんのテンションが高すぎて、ペースに追いつくのに大変だった。でも、僕の好みに似ていている人がいて、しかも僕の前にいる。漫画や小説のように奇跡でも起きると思わなかった。奇跡なのか、夢でも見ているなのか、分からないけど、そんなことより僕の好みを話題にして話せて嬉しい。
今の時間をこのままに続いてほしい。時間をピタッと止めて、永遠に続けてほしい。ループはありだなと思いながら、二人の輪に入り、話を盛り上げた。
数分後にようやく連絡バスがやってきた。責任者が名前と高校名をそれぞれの生徒に質問する。全員に質問し終わったら、全員に連絡バスに乗るように命じた。
インターシップに参加する人のために寮を用意してあった。全員は寮に向かう。責任者が寮の過ごし方や、インターシップについて確認など細々と説明する。いよいよ今日から3日間にインターシップが始まる。説明が終わったら、泊まる鍵をもらい、それぞれの生徒はもらった鍵に番号を書いてある部屋のところに向かっていく。
この後は、夕食を食べたり、大浴場に入ったり、明日に向けて準備をしたりする。大体終わった同時にRINEの通知が来た。どれどれと確認してみると、夕食の時に交換した幹太さんだった。なんだろうとアプリを開いてみた。
『いよいよ、明日からインターシップが始まるよな!!』
『うん、とても緊張するね』
『それな。あ、俺寝起きが悪いので、早く起きられるか分からないので、もし遅くなりそうだったら起こしてもらっていい?』
『僕が起こしに行く?いいよ(スタンプ)』
『マジ?!神やで!!さっき昂良さんに頼んでみたが即に断れたww』
『昂良さんは真面目そうだから自分で起きろと言いそうだね笑』
『明日は早いので、早めに寝るわ。おやすみ!』
『あ、はい。おやすみ』
短いやり取りだけど、両親以外に初めてRINEを交換して、やり取りした。まだドキドキという鼓動が収まっていない。この気持ちはひょっとしたら嬉しい?うん、初めて頼まれたから。頼まれるということは僕のことを信用しているだろう。だから嬉しい。
でも、なんだかモヤッという気持ちがする。なぜモヤっとするか分からない。幹太さんが昂良さんのことを話す時点でモヤっとした。このような気持ちは初めて感じたので、なんだろうか分からない。明日は早いのでさっさと寝ようと、考えない理由を探す僕がいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます