第10話終戦

戦いは終わった。唐突に。

「消えた?」

「一応、そういう魔法がないことはないな。転移魔法って言ってな。」

転移魔法、数々のファンタジーの原則に従えば自分を移動させる魔法だろうか。

「そんな魔法があるなら、さっきの戦闘中に使ってもよさそうですが。」

「それも含めて、切り札だったってことだろうよ。」


「・・・・私は何を患者の治療をしていたはず、、」

「確か白い霧が出てきて、、、」

他の住民や、眠らされていた衛兵たちも次々と起きてきている。これなら、重傷を負っている人も助かるかもしれない。

「妙だな。被害が少なすぎる。」

「どういうことですか?」

ミリオンさんは、もう一度周りをじっくり眺めた。

「よく見てみろ、負傷者の数が少なすぎないか?」

俺は周りをよく観察する。9割は無事または軽傷だな。

「霧には本当に催眠効果しかなかったってことですかね。」

「この状況からするとあり得ないことじゃない、、、」


負傷者の手当てや、戦いで火が付きかけた建物への処置がそのあとはとんでもないスピードで回ってくるようになった。忙しいなんてもんじゃない。段々と、血が腐ったような匂いもその場に充満してきている。精神的にはちょっときつくなってきたけどあまり重症の患者は運ばれてないからな。まだ楽だ。

夜になった。当たり前だけど、夜になっても戦いは終わらなかった。逆に、負傷者は多くなっているように感じる。早く、一刻も早く終わってほしい。ご飯は途中で加えたパン一つだけだ。眠気は感じなかった。それ以上の死の気配がしたから。そして、次の日の早朝。草木がぼんやりと明かりを放ってきたころ、

「敵大将、討ち取ったり。」

連合軍将軍ベルの声が鳴り響いた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

その声を聞き、現在進行形で手当てをしていた矢が腕に突き刺さっている人が雄たけびを上げた。

「暴れないでください!!」

ただでさえ、付け焼き刃なのに暴れられたらこの人を殺してしまいかねない。

「隊長が勝ったぞー!!!!」

「俺たちの勝ちだー!!!!」

「加勢しろ―!!!!」

「いけー!!!!!」

具合が悪そうにさっきまでぐったりしていた人も叫び始めた。流れるようにその人たちは戦いへ向かっている。元気そうで何よりだ。

「ちょ、、、」

自分の手にいた人も抜け出してしまった。

はっや。そんな元気どこにあるんだろ。朝日が完全に差し込んできた。

「疲れた。」

朝日が差し込む中、俺は草に寝転んだ。初めての戦いの終結だった。


深い眠りの中、俺は考えていた。世界を救うということは魔王を倒せという意味だろうか。今はそんな意味な気がする。同じゲームセンターにいた友達のことも、やはり心配だ。彼らももしかした俺みたいにこの世界に、、、それは楽観的な思考だろうか。魔王を倒す、、、いまのぼくにできることではないだろう。四天王にもかなわないだろうし。そもそも、魔王を倒すこと俺がいなくてもできそうじゃないか。ベルとか言う人は四天王に勝ってたし。自分がこの世界で何をすればいいのかわからなくなってきた。



「んっ、あー。痛っ。」

再度俺が起きたとき、町はもう夜になっていた。尖った石があったみたいで、体の節々が痛んでいる。誰も起こしてはくれなかったみたいだな。

「おう、小僧。起きたか。」

「師匠。」

横には元気そうなミリオンさんの姿があった。

「戦いの結末はどうなったんですか?」

「連合軍の隊長が勝って、魔王軍は総崩れ。撤退していったよ。」

ひとまずは勝ち、、、でいいのだろうか。

「連合軍の兵士たちの犠牲はかなり少なかった。その代わり、魔王軍も撤退に成功し犠牲はある程度抑えてている。大勝、といった感じではないな。」

犠牲が少ないだけでよかったと思ってしまうな。


一か月後。連合軍はこの町を出発した。この町の復興が完了し、魔王軍を追うためだ。今は、この町は一か月前に激戦が起きたことなどつゆ知らず、平和な時が流れている。

「真理教?」

そんな時に、町に胡散臭い宗教がやってきた。

「ええ、私たち真理教は皆さんに安全を提供いたします。」

「て、言ったってなあ。うちには連合軍も来てくれたし、、」

どうやら、彼らは白昼堂々と新興宗教としてこの国で魔法を使えるらしい。羨ましい。俺にも許可をよこせ。そういえば、あの後俺は魔法を使ったことに関して何のお咎めもなかった。あの地味眼鏡、いい性格をしているのかもしれない。

結局その集団は一泊してすぐ帰っていった。


とりあえず、半年間は平和な月日が流れたのだ。


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どうも、絶対に怯ませたいトゲキッスです。やっと書き終わって満足しています。次からの展開は少し悩んでいますが、今後もご愛読してくださるとうれしいです。


次回!!!   奴隷
























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