第7話混戦

その声を聞き、兵士たちは次々と雄たけびを上げた。闘争本能を刺激されたようだ。隊列を自ら乱してしまう兵士もいる。

「お前ら、俺がいつも言ってることはわかってるな。常に頭は冷静にだ。惑わされるんじゃねえ!!!!」

隊長の声が響き渡る。ここら辺、びしっと決めるのうまいなあ。

「敵までの距離500メートル!!」

「魔法部隊!!!用意!!!!」

すぐに逃げたくなるような衝動に駆られた。ほんの目と鼻の先に敵がいる。豪快な音を立てて、近づいているのが見えた。

「小僧、怖いか。」

「・・・・はい。」

「落ち着けよ、小僧の仕事は後方支援だ。くれぐれも魔法を使うんじゃねえ。」

「わかってますよ。」

そろそろ目視で敵を確認できる範囲に入ってきた。馬のような動物に乗っている魔族。青い肌と、真っ白い目をしている。小さい奴大きい奴、痩せてるやつ太ってるやつ様々いるが、共通しているのは好戦的に彼らは高笑いをしながら突っ込んできているということであった。

「敵までの距離200m!!!トラップ発動します!!!」

そんな声が聞こえた。そして、敵の最前線が

「な、なんだこれは。」

「おい、ちょっと待て。俺を踏んで、ぎゃ!!」

敵の最前線だけでなく、次もその次も沈んでいく。

「落とし穴か。随分古典的だな。」

でも、敵の10分の一ぐらいはあの穴に落ちたかもしれない。

「魔法打ち方始め!!!!!!」

「打ち方始め!!!!」

続いて、穴に落ちた敵に向かって、水色の光が降りそそいだ。

「み、水魔法。窒息死させる気か。」

味方ながらえぐい手だ。

「ちんけな人間らしい姑息な手だな。」

ナーバスといっていた魔族が見下すように言い捨てる。そして、ゆっくりと杖を取りだした。

「散れ、魔法よ。」

その一言で、水色の光線は弾け、消えたのだった。

「すごい、、、。これが四天王か。」

そう思ったのも束の間、ついに魔王軍と連合軍が衝突しようとしている。

「怯むな!!!大楯部隊衝突に備えろ!!!」

ドガ!!!ガガガガ!!!!

後ろでも十分衝撃が伝わってくる鈍い音が聞こえた。大柄な楯を持った兵士たちが、必死の形相で魔王軍の勢いに耐えている。

「弓矢部隊放て!!!!」

戦場の後ろの方にいる弓矢部隊が一斉に弓矢を発射した。敵中段が一気にハチの巣になっている。

「前方敵弓矢部隊弓矢を発射、各自注意せよ!!」

今度は、こっちに弓矢が飛んできた。後ろの方にいる弓矢部隊と後方部隊の方、注意して!!!

「小僧何やってんだ、建物に早く隠れろ。」

「え?」

ミリオンさんに強引に手を引っ張られて建物の中に入った。

「こっちに矢が飛んできてんだろ。ちゃんと見ろ!」

「何でこっちに、、、」

「そらそうだろ、前だと味方に当たるし後ろには衛生兵がいることが多い。飛ばし得だ。」

・・・あまりに現実感がなくて、少し呆然としていた。頭が回っていなかったみたいだ。

「すいません、現実感がなくて呆然としていました。集中します。」

「ああ、集中しろよ。」

今、俺は現実の戦争にいるんだ。目の前で起きてることは映画や漫画じゃない。しっかりしろ、俺。

「負傷者です。救急お願いします。」

その声は俺を一気に現実へと引き戻した。

「そこに寝かしてください。私が診察します。」

町の医者さんと軍医さんが総出でそれを見る。魔法部隊だろうか、その人は持っている杖を大事に握りながら、矢が刺さった腕の治療を受けていた。

「矢が足りない!!!後方部隊!」

矢の補給合図が聞こえた。

「行くか、小僧。」

「はい。」

大丈夫、行って帰ってくるだけだ。戦闘に巻き込まれることはない。

ミリオンさんとともに矢筒を持ち、走り出した。

「うっ!!!」

「右翼空いてるぞ、誰かはいれ。」

怒号飛び交う戦場の中、ミリオンさんに一生懸命ついていく。ミリオンさんについていくのに精いっぱいで緊張する暇がないな。

「あとちょっとだ。」

前線もより近くで見えてきた。四天王のナーバスとか言うやつの相手は、ベル将軍がやっているみたいだ。剣で魔法を防ぎ、段々と近づいている。

「後方部隊です。矢を届けてきました。」

そういっても、だれも返事を返さず目の前の敵をじっと見つめている。

「小僧、帰るぞ。」

「はい。」

怒号の中をまた、人の波をかき分け進んでいく。ただ、魔族はどんどん減って言っているように見えるが、人はあまり死んでいない。優勢なんじゃないか?



「なあ、小僧。」

「どうしたんですか、師匠。」

「これは後ろよりも前の方がまだ安全かもしれねえよ。」

後方に戻った時、目の前には信じられない光景がまっていた。

「白いの、吸い込んだらまずそうですね。」

「ああ。俺の勘もそういってるぜ。」

さっきまでいた町は完全に白い霧に覆われていた。


――――――――――――――――――――絶対に怯ませたいトゲキッスです。読んでいただきありがとうございます。もっと多くの方に読んでもらえるように頑張ります。今回は、キャラクターたちと一緒にこの世界の魔法というシステムについて、細く説明のようなものをしたいかと思います。

周大「まず、物質魔法と操作魔法ってのがあるんだよな。ものを出すのが物質魔法で、物を操作するのが操作魔法。(結構文字通りでわかりやすいよな)」

ミリオン「そうだ、物質魔法だけ使えてもそのあとそれを操作できないと使いこなせたとは言わねえな。」

周大「別に何も言わずに魔法は出せるんだよな。」

ミリオン「ああ、何も言わなくても出せる。けど、ことばと魔法のイメージを結び付けてイメージしやすくなる手法というのもあるな。」

周大「そうだ、魔力量ってなんだ?そんなワードをよく耳にするんだけど。」

ミリオン「物質魔法の出せる限界、みたいなもんだな。それによって、一度に出せる量が違ったりする。水が増えたりな。」

周大「なるほど。(やっぱりそうだったのか。)」

ミリオン「あとそうだな、雷とか氷とかも出せるやつはいるな。まあ、大体の物質は理論上出すことは可能だ。相応の修業と才能が必要だけど。」

周大「人を直す。みたいなことってできないのか?」

ミリオン「そういう系は、基本出来ないな。歴史上ではいないことはなかったっぽいが、、、少なくとも現世にゃ生きてねえ。」

周大「なるほど、魔法の全容が大体理解できたよ。ありがとう。」


以上です。

次回!!!!催眠霧

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