第2話男しかいない町
明らかに現代の日本ではありえない、中世の街並み。どこの建物も、高くて三階建てぐらいだろうか。
「なんか、大事なこと言い忘れたとか言ってたけど、、、」
大丈夫だろうな。神のくせにドジなのはやめてほしい。まあいいや。とりあえず、この世界を見ていこう。
「らっしゃい、らっしゃい、羊肉のスープだよー。うまいよ、うまいよ。」
肉屋の親父がうまそうなスープを売っている。
「一つください。」
「あいよ、500円だよ。」
500円。500円。
「1000円からで。」
財布から1000円札を取り出し、それを出した。
「うん?お兄ちゃん。それは何だい?この国の通貨じゃないなね?」
あ、確かに。異世界と地球の通貨が同じわけないじゃないか。
「すいません!!!ごめんなさい!!!失礼します!!!」
は、恥ずかしい目にあった。こういうことはどうせ別の場合にもあるだろうから、注意しよう。
「金がないのは大問題すぎる。」
不親切なことに、あの神は現地の金を一銭たりともくれなかった。言語が通じるのだけは不幸中の幸いか。ほんとに最低限だな。こんなんで、どうやって世界を救えというのだろう。
さんざん迷った挙句、俺はギルドという怪しげな組織に入ることにした。血なまぐさい、少し怪しげな組織だ。どうやら、ずいぶん人手不足らしい。
「アットホームな職場です!!!」
看板にはそう書いてあった。大体、こう書いてある求職はブラックだということは今や赤ちゃんでも知っていることだ。典型的なブラック企業だろう、たぶん。
「すいませーん、ギルドに入りたいんですけど。」
錆びついている扉を開けて、俺は中に入った。
・・・中には誰もいないようだ。
「誰かいますかーーーーー」
結構な音量で中に呼びかけるが、返事はない。
「つぶれたか?」
「失礼な!!」
「わっ!!!!」
暗闇のどこかから、声が聞こえてきた。
「誰ですか?」
「そういう時は、そちらさんから名乗るのが礼儀やないか?」
少し声が近くなった。
「僕は、、、周大です。増田周大。」
「俺は、個々のギルドマスターやっとる、ミリオン言うものや。よろしゅう頼むで。」
暗闇に現れたのは、身長が低い爺さんだった。少し汚れた道場服を着ている。
「あー、じゃあ僕帰りますね。ここ、もうやってないみたいなんで。」
こんな働けなさそうなところからは、早く退散するに限る。
「ちょっと待て、お前。魔法を使いたくないか?」
後ろの爺さんはそう、声をかけてきた。
「魔法?この世界だとみんな当たり前に使えるんじゃないのか?」
そういう認識だと思っていた。爺さんしばしの沈黙。
「じゃあ、お前さん使えんのかい?」
「いや、俺は使えないけど。」
地球だとそんなもんねえし。
「世間知らずなお坊ちゃん、、、でも魔法ってものは知ってるんだよなあ。この俺ミめんどくさそうな爺さんだ。
「はあ、どうせなら爺さんが美少女だったらなあ、話も聞いたんだが。」
「美少女?」
爺さんはまた引っかかった。話が進まないんですが。
「今どきの爺さんは美少女も知らないんですか。可愛い女の子のことですよ。」
「女??????????」
女を知らない?そこだけ別の言葉だったりするのか。いないなんてことはないだろうし、、
「あれ?」
もしかして・・・・
「あれ?」
もしかして・・・・・
「あれ?」
もしかして・・・・
待て、そんなことはないはずだ。落ち着いて記憶を辿れ、女の人がいるはずだ。
ヒツジやの親父、肉屋の親父、飯やの少年、、、、全員男か。男子高にいたからって、もともと女子が半分いた世界から一人もいない世界に来たことに気づかないなんてことあるのか?いや、あってはならない。
「ちょっと待っててください!!!!!!!」
「お、おう。」
勢いよく、ドアから飛び出した。
「どこだ?」
女の人、女の人、女の人、あの子は、、、、いやあの子は男だ。男子高にいた俺にはわかる。
「いないーーーー!!!!!!」
本当にいないみたいだ。大問題すぎる。もしかして、神が言っていた大事な事ってこれか?こんな大事な事を言い忘れるなんて、神の頭はどうかしてるのか?
・・・・どうしよう、急に地球に帰りたくなってきた。あったかい家が懐かしい。
「おい、おいって。大丈夫かお前さん。」
爺さんは親切にもここまで追ってきたみたいだ。こうなったらやけくそだ。
「入りますよ、ギルド。」
「お、おう。わかったぜ。」
どうにか生き抜くすべを学ばなくては。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――今回はここらへんでおしまいです。次からは、この世界の魔法とかについても言及したいですね。
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