300-暫くの白様と私達
『ふむ、相変わらず見事な検知能力じゃな、剣鉈よ。今日は……そうか、あの聖魔法大武道場かの。有難い、其方のお陰で試合の内容も見る事が出来た。礼を言う』
『お褒めの言葉を頂戴しました幸甚に心よりの感謝を。然しながらこちらは全て末裔殿のお力に存じます』
あのう、白様?
お変わりない激渋イケボを堪能出来た事は嬉しいのですが。
剣鉈さん……私の力?
違うと思うんだけど。
絶対これ、凄い検知能力だよ?
黒白達だって、『さすがに白様にはご本人に確認しなければお繋ぎできません』って言ってたもの!
あ、百斎さん、ナーハルテ様とセレンさんを呼んで……じゃない、瞬間移動させてる。
広いものね、地上闘技場。
あ、あと芝が!
青々、ふさふさ! 寝転びたい! けど我慢!
『彼の地、トマリコン王国は幻獣王様を強く信仰する国であるが、聖霊王様と精霊王様についての深い敬意を持つ国でもある。よって、我が主、精霊王様から幻獣王様にお話頂いた故に、コヨミの事、そして末裔たるマトイの事も全ては幻獣王様からのお言葉としてトマリコンの王族達に伝える事が出来た。そこでだ、ナーハルテ、其方の姉の挙式は早まるぞよ。安心せよ。コヨミ王国にとって大切な月、七月には重ならぬからの。ハンダ-コバルトの叙爵式に重なるやも知れぬが、これで其方とマトイの式を早める事が出来ると思ってもらっても構わぬぞ。元々、コヨミ王国は幻獣王様の許しを頂きペガサスを郵便制度に冠しておる故に一目置かれておったし、王太子がナーハルテ、其方の姉に寄せる心も良きものであった。安心して家族全てで姉を祝ってやりなさい』
白様?
私の、ナーハルテ様との? 早くないですか?
あと、トマリコン王国、って言うんだナーハルテ様のお姉様が嫁がれる大国……あ、色々知識が流れ込んでくるこの感じ。
そうか、ニッケル君の知識を私が必要としたからだ。
婚約者様のお姉様の嫁がれる先の国を知らないなんて有り得ないからね。
こんな感じで、知識が詰め込まれ過ぎない様に記憶の調整をして下さっていたのはやっぱり白様なのかな。もしかしたら、違う何かとか誰かとか、制約と誓約とか。
『……すごいなあ』
え、誰? と思ったけど、私以外には誰も反応していないから、まあ、いいか。
『……主殿』
あ、ごめんなさい、寿右衛門さん。
『そうだね。でもマスターコヨミンはめちゃくちゃ努力もしてるからね。必要な知識は後で諸々確認しようね。そうだ、コヨミ王国の七月の事も』
うん、ありがとうハイパー。
ところで七月って、コヨミ王国の特別な月なの?
『コヨミ王国の祝いの月。色々凄いよ!』
そうなんだ。
私は冬の初めに魂の転生をしたからなあ、とは言っても温暖快適な気候のコヨミ王国嬉しいな、だったのだけれど。
今はもう三月。
早いなあ。いや、密度は濃かった、本当に。
「何という素晴らしきお言葉……。白様、そのお言葉を白黒にお伝え願えましたら幸甚に存じます」
「良かったですね、ナーハルテ様! できたらお父さ、父の叙爵にはご出席頂きたいですがお姉様の結婚式を優先なさって下さいね!」
「ありがとうございます、セレン様。可能でしたら両方にと出来ます様にいたしたく存じますわ」
『ふむ、ナーハルテとセレン、稀少な聖魔力保持者同士が仲を深めた事は良き兆候ぞ。先程の言葉についてはいずれ我が直接其方の家に伝えに行くのでその旨を伝えるがよい。では、一度精霊界に戻り精霊王様にお礼と委細を伝えに向かうので、失礼する!』
「お待ち下さい、あたくしも共に! 第二王子殿下からのご依頼がありますの。き、大司教様、よろしくて?」
「どうぞどうぞ。僕がいたら、というか剣鉈もいるから何かしようとする奴は命知らずか大まぬけだから、行ってらっしゃい!」
「ナーハルテ、ちょっと失礼するわね。紫色ちゃん、ナーハルテと殿下をよろしくね?」
「よろしくされました! 行ってらっしゃいませ!」
やっぱり、仲良いね、朱々さんとセレンさん。
『ありがとうございます。朱色殿もお気を付けて』
『また是非に』
『誠にありがとうございました。朱々、任務に励んで下さいね』
『白様、朱色様、またお会い出来る日をお待ちしてます!』
ええと、剣鉈さん、百斎さん、ナーハルテ様、セレンさん、と。
良かった良かった、みたいな雰囲気だけど、私、剣鉈さんの事は説明とか紹介とかはしてもらえるの……かな?
『いや、マトイよ。魔力の拡散、良く出来ていたぞ? 剣鉈の事は我と朱色が転移してから皆に訊けば良かろう? それより、芝も喜んでおるじゃろ? 気配で分かるぞよ。……まあ、取り敢えず、またの!』
え、あ、はい、白様。
とりあえず、良かった、で良いのかな?
うん、褒めて頂いたし、良いんだよ、ね?
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