299-聖魔法大武道場地上闘技場の芝の補修と私達
「よーいしょっ、と」
「転移魔法も上手になられたわね、殿下」
「ありがとうございます、浅緋さんと百斎さんのご指導と黒白のお陰です」
「えー、殿下の努力だよ!」
『その通りです。』
お出迎えありがとうございます、の大司教様百斎さんも黒白も褒めすぎじゃないかな、私の事。
あ、飛行というか浮遊は自分でもかなり上手になったかな、と思っています。
転移からの着地もふわり、と。決まった! かな?
そんな感じで、兄上とあくまでも傍仕えさんの立場を崩さない辺境伯閣下の分体さん、灰さんの許可を得て朱々さんと共に地上闘技場に転移した私。
控え選手用のテントさん(天幕さんの身内みたいなのでさん付け)や大活躍だった実況解説の大司教様百斎さんの実況解説席等は全て回収されていて、セレンさんが聖魔力注入、ナーハルテ様はそれを補助魔法で助けていた。
枯れているものもある芝たち。
それが、青々としていく様子が早送りした植物の成長記録映像の様で何だか楽しい。
「来て頂いてありがとうございます、第三王子殿下、朱色殿! 魔石殿達は新しい斧槍の材料探しに行ってしまいまして。多分、あの周辺国の洞窟でしょうね。魔石殿達でしたら精霊の眠りも妨げませんから」
「こんにちは、百斎さん。騎士団に返す予定の斧槍の材料ですよね。あの洞窟……あ、あの組織の」
あの周辺国は兄上が留学されるご予定の共和国にも近いから、獣人売買組織を潰せたのは良かったよね。
今はらスズオミ君を助けてくれた精霊さん達が眠りについているから開発とかあそこに求者が匿っていた獣人さん達の住処に戻ってもらうとかは出来ていないのだ。
でも、獣人さん達は辺境区を気に入ってくれているみたいだし、開発については魔石資源が潤沢な我が国には急ぐ理由もない。
こうやって、魔石さん達が伺う分には全く問題ないし。
「ついでに精霊さん達にスズオミ君の頑張りを伝えて下さってたりして」
「かも知れませんね」
「だと良いなあ。あ、私は何をしたら良いのでしょうか」
ナーハルテ様とセレンさんは私に会釈してくれてから、そのまま作業中。
偉い! 早く、お手伝いがしたい。
「そうですね。お願いしたいのは二人と同じく地上闘技場への魔力注入なのですが、こちらの方を担当して頂きましょうか」
軽々と聖教会最上級聖職者衣から百斎さんが取り出したのは、カバーの付いた、……
狩り! って感じの渋い刃物。
「そうです、私の武器。
なさらず……いえ、なさりたいですけど今は取り敢えず。
ええと、確か八寸って、約24センチメートル?
メートルやキログラムや円以外にも、あちらの単位、使ってるんですね、コヨミさん!
そして、百斎さん、大司教様、刃物!
しかもこんなにゴツいのを、良いんですか?
「はい、大丈夫ですよ。あくまでも自衛の為ですから。しかもこれは、コヨミ様が僕の為に選んで下さった品ですから。……さあ、これを握って、覆いを外して下さい」
あ、はい。コヨミさんからの贈り物なら何も言う事はありません。
それに、そうだ、
赤味を帯びた黄色。百斎さんと千斎さんの色だ、この剣鞘。
「そうなされましたら、地面に突き刺して下さい。……そうです」
剣術試合のアタカマさんの逆になるのかな。
アタカマさんの場合は魔力循環だけど、私のは魔力注入、つまり供給だよね。
『ありがとうございます。……本当に、久し振りですね。コヨミ様。正しくは末裔様であられますか』
え、誰? 素敵ボイス!
『お礼です。芝の成長は勿論ですが、加えまして、ふわふわ様のお声を、こちらに』
え、え、ええ?
「何という聖魔力の拡散。わたくし達の周囲の芝は、更に……」
「本当、あ、大司教様の周囲も!」
落ち着いたナーハルテ様のお声と、多分驚きのポイントが私と似ているセレンさんの声。
もちろん、私の周りの芝達もぐんぐん伸び始めている。
そうか、あの優しくて、清々しい声は。
剣鉈さんの声だったんだ。
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