298-聖女候補セレンさんの婚約者候補のお話と私

「では。婚約者候補についてですが」

 

 いよいよだ。


 兄上は、候補の候補もご存知なのかな?


 どうしよう、スズオミ君、候補の候補にはいるのかなあ。

 私が兄上に申し出てお訊きする? 

 婚約解消が決まったばかりだからさすがにマズいのかなあ……。


 そもそも、王位継承権ほぼ無し第三王子がこの場にいられるのも有難いと言えなくもないし……。


『また、何だかおかしな事考えてる……』


『今回は大丈夫ですよ、リュック殿。コヨミン様、取り敢えず第二王子殿下のお言葉を待ちましょう』

 リュックさん、黒白。

 まあ、黒白の言う事が正しいのだろう。


「……第二王子殿下、灰殿。一つ、宜しいでしょうか」


 兄上のお言葉を静聴。と思っていたら、の金紅さん。もしかして!


「何かな」「どうぞ」


「ありがとうございます。此度の剣術試合に伴い、婚約解消となりました者を聖女候補殿の婚約者候補に加えて頂きたく」


 兄上、灰さん。

 そして……万歳!


 ありがとうございます、金紅さん! 素敵!できれば獅子のお姿の時にもお会いしたかったです!


 今は、金の鎧に身を包んだ赤褐色の髪と黄色の目の美形騎士団団長さん。

 いや、こちらも素敵ですが!


「金紅殿、それはこちらもありがてえよ」

 え、ハンダさんも賛成なの? 凄いな、スズオミ君の奮闘!


「……ありがとう、ハンダ-コバルト殿。では」


「ああ、ライオネア・フォン・ゴールド公爵令嬢、こちらこそ、娘を宜しくお願い申し上げます」


「いえ、自分はご令嬢の護符に助けられました。この身でお役に立てますならば。誠心誠意、ご令嬢をお守り申し上げます」


 ズコーッ!


 こけたよ、私!


 いや、実際はこけてないけど! 一応、第三王子だから!


 そうか、そっちかあ!

 おめでたい、っていうか、あちらの『キミミチ』ユーザーのほとんどの夢が実現した!

 凄い! ライオネア様、凛々しい!


 カバンシさん、ネオジムさんはうんうんと肯定。


 やっぱり、即決ですね。


 それにしても、セレンさんとナーハルテ様、二人の聖魔力保持者をお守りする獅子騎士様!


 ヤバいな、私の情緒が暴走しそう。


『おかしな事を考えなくなったのは良いけど……プレーヤーに戻りかけてない?』


 え、大丈夫……だと思う。


 でも、気遣いありがとうね、ハイパー。


 そうだね、私よりもセレンさんが大丈夫なのかなって、そっちが心配だから割と大丈夫だったって感じかなあ。 


 これ、セレンさんが聞いたら嬉しさのあまり意識失わない?


 あ、スズオミ君は? って、顔面蒼白?


 いや、何とか押さえてる。頑張ってるね。


「あ、あの、皆さん……」


 やっぱり、これは将来の近侍筆頭の為に、私が!


「ニッケル、すまないが僕からもお伝えしたい事があってね。先に良いかな」


 あ、兄上。

 もしかして私の代わりに? ですか?


「うん。そうなんだよ、ニッケル。ハンダ-コバルト殿、私の留学期間中のみで良いのですが、私を婚約者候補として加えては頂けないでしょうか。勿論王命ではございません。ただし、期間限定という事は外部には出さずにお願い申し上げたいのです。ご家族宛でしたら公文書の作成も厭いませんが」

 

 え。


「え。ええ? いや、まあ、第二王子殿下が良い方ってのは分かってるけど困ったな、どうしようかカバンシ、ネオジム、緑ちゃん?」


 「どこに問題が?」「栄誉と喜ぶべきでしょう?」


 カバンシさん、ネオジムさんは全面的に賛成。

 うん、兄上は素晴らしいお方だからね!


「俺も家族枠かよ! 嬉しいけどな? いいんじゃねえ? 主様は第二王子殿下の事が大好きだからな。俺としては主様の為にも受けてほしいかな。な、主様?」


 いや、緑簾さん……タキシード姿格好いいですね、じゃないよ、私!


 わ、私? 私の意見必要なの?


 え、はい、いや、義姉上? なるの? セレンさんが? いや、悪くない……って言うかむしろ良いな?


 あ、期間限定だからそれはないのか。でも、やっぱり良いなあ。


 そうだ、スズオミ君は? と思っていたら。


「ああ、じゃあ俺の息子もお願い申し上げたいのだが、どうだろうか」


 きたあ、アタカマさんだ! 良かった!


「うーん、まあ、今日のあの試合を見ちまうとなあ。学院長先生からも推薦されてたし……」


 あ、そうなんだ!

 でも良かったねスズオミ君! 顔色が元に戻った!


「はい、此度の試合の他、選抜クラスへの編入合格を必ずや成し遂げますので!」


 あれ、スズオミ君の顔色が戻った後の言葉が聞こえない。


 何か、セレンさんへの思いの丈とか? だとしたら、私に聞こえない様にしてくれたのは寿右衛門さんかな?


「まあ、内容はそんな感じ……かな。灰殿の音声認識阻害魔法だよ、気にしないで。とりあえずニッケルは地上闘技場に向かうと良いよ。先程大司教様から念話を頂いたから事情は伺っている。ナーハルテ嬢と聖女候補殿を手伝ってあげて。聖魔力でないとあの芝達は補修が難しいからね。終わったら皆で周辺屋台の散策をしたら良いよ。観戦は、試合が充実していたから応援に徹してしまったでしょう? 勿論、茶色殿がこちらに残り、委細を君にも必ず伝えて下さると言われているから」


 え、兄上、貴方は本当に……!


 好きです、兄上!


「あ、串焼き串焼き! 俺らの観覧券も、って、貴賓室の券はマズいか、身分バレるな!」

 

 分かりましたハンダさん! 色々買ってきますよ! 

 コヨミ王国の経済を回します!お届け雀便を頼もうかな?


『いつでもお呼び下さい、主殿』

『ありがとう!』


 すると、うきうき気分の私に微笑まれた後で兄上がこう言われた。


「朱色殿、ニッケルに付いて頂けますか」 


『それから……』

「了解いたしました。では、茶色殿、第二王子殿下、皆様方、灰殿、失礼しますわね」

『任せてちょうだい!』


 朱々さんが私一人の為に護衛役? 珍しくて嬉しい。一瞬だけどね!


 その前に兄上、朱々さんと何か念話で内緒話かな。お邪魔をしないで待っていないとね。


 『エコバッグ、たくさんあるからね』


 ありがとう、リュックさん。

 あ、革鞄からシマエナガ似の白様印リュックさんに戻ったんだね。


 正直、ナーハルテ様とセレンさんと屋台巡りって、楽しみだなあ!


 試合は最高だったし、辺境伯爵閣下の分体さんにもお会い出来た!


 それから、婚約者候補も何とかなりそうだし!






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