297-その後の空席の貴賓席の私達
「ええと、第二王子殿下……お、じゃなかったわた、私の準辺境伯……位の叙爵を王家からの許……ご承認の上で簡易的ながら正式に行い、同時に娘の婚約者候補も発表、という事か、じゃない、事でしょうか。大げさ、じゃなかった、形式的ではなくても良いというありがてえ、違う! 有難い配、ご配慮を……。あと、やっぱりそちらのお方は……」
「うん。ああ、言葉遣いその他で不敬とする様な事は絶対にしないので気にしないで。そもそも、我が国では、所謂不敬罪は王族個人が他者へ適応させるものでもないしね。楽にして下さい。あくまでもここは非公式な場だから。ねえ、ニッケル?」
頑張って敬語を、無理ならせめて丁寧語と謙譲語をと努めてくれているハンダさんと気配りの兄上。
ちなみに、コヨミ王国における不敬罪は王国全体への不敬行為にのみ適応されます。まだ適応されたことはないらしいくらいに珍しい罪。
二人の遣り取りを見ていたら、私にもやっと分かりましたよ、兄上。
私の役目……緩衝材ですね! ハンダさんが緊張しない様にって!
さすがです兄上。
ふわふわもふもふぷにぷに癒やし系にはなれないけど、緩衝材なら任せて下さい!
「その通りですよ、ハンダさん! 普通に、言いたい事も質問も何でも自由にして下さい!」
「本当です……か! ありがてえ……」
良かった、
「安心してもらえた所で続けるね。叙爵の場は中央冒険者ギルドを予定している。立ち会いは第二王子ならびに第三王子、そしてギルドマスタースコレス殿。筆頭公爵令嬢も含めた全員をお呼びしたいのだが、ご都合もおありだろうから、ハンダ殿のご家族は必ずお願いしたいと、今はこれ位かな。ネオジム博士、ご血縁には医療大臣と財務大臣の両閣下が声掛けをなさるそうです。……どうでしょうか、
「はい、私からもお願い申し上げます」
「承りました」「ありがとうございます。私からも、血縁と私の伝令鳥、梅殿にお伝え申し上げます」
え、傍仕えさん、めちゃくちゃかわいい美少年熊獣人さんなんだけど、やっぱりどちらかの王族さん? なの?
だよね、この雰囲気。
カバンシさん、ネオジムさんは何処の何方かご存知なのかな? ハンダさんも、何だか……?
「あ、そうでした、勿論、私も参加したいです!」
「ああ、良かったです、第三王子殿下。そして、たいへんに失礼を致しました。実は、私、コヨミ王国当代辺境伯の分体に存じます。ただ、初代と先代に、初代国王陛下の末裔様に先にお目に掛かります事をたいへんに悔しがられまして。折衷案がこの分体なのでございます。故に、この場では第二王子殿下の傍仕え見習い、灰とお呼び下さい」
傍仕えさんが私の方を見ている。え。ええ?
「……あ、ああ! やっぱりだ当代様! 何だその詐欺みてえなくそかわいい耳は! いつもの迫力満点のごつい……もが、もが」
あ、ハンダさんがカバンシさんに押さえられた。
うーん、かわいい中にも雰囲気のある方だと思っていたけど、他国の王族さんではなくて、噂の辺境伯爵殿だったのか!
確か、初代伯はコヨミさんを偲ぶ会の名付けの方だ。
大書店のあの小部屋の事も、初代伯さんはご存知なのだろうな。
あ、金紅さんとかアタカマさん、緊張してる。
顔には出されないけど、魔力で分かるよ。
やっぱり物凄い方なんだね。
「当代辺境伯閣下、ハンダが誠に失礼を……」
「いや、傍仕えには何もお気遣いなさらずに。とにかく通知は先代または当代からとなります。宛先はどうしましょうか……」
「聖教会本部の我々宛でよかろう。聖女候補セレン-コバルトの婚約者候補の発表も我々が行いたいので私と大司教も列席で良いだろうか。……また、彼女の念話と通話の術式案、簡易印刷機の素案提出者である事も同時に。いずれも既に用いられ、開発が始められてはいるが、公式に喧伝しよう」
「もう国名も出して良いでしょう。聖国の連中への牽制ですな。今回の良き試合にまで乗りこみおって……。どうせ、聖女候補殿の婚約者候補になってやっても良い、とでも申しているのでしょう?」
カバンシさん、辺境伯……灰さん、浅緋さん。
そして再度の辺境伯……灰さん、事情通だ。
あ、そうだ、カンザンさんのメモ!
そういう事だったんだ!
聖国って確か……。
『昔むかしに聖女様が顕現されたと言われている国。それさえも、聖女様を他国から誘拐したんじゃないかって国民から言われているような国。だけど今は聖女候補もずっと現れていないし、獣人売買組織とも拘わってるらしい。悪い噂がてんこ盛り』
ありがとう、ハイパー。また勉強させてね。それにしても、なあ……ひどい。
『そう、ひどい。あと、勉強はいつでもおっけー』
『失礼申し上げます。聖国に関しては左様にございます。……釣書のつもりなのかな? 下らぬものをよこして来ていたけれど、掛けられた児戯と呼ぶには子供達に失礼な魔法については百倍返しにして書状ごと自動的にあちらに返されているから我が国には一切関係ないと突っぱねる事も可能です。茶色殿達の郵便受付箱のお陰で大部分は弾かれていたのですが。連中が入り込む予知など存在しない、優秀な婚約者候補を取り揃えてやれば良し。皆様ならば確実にお選びになるでしょう……そうだ、剣術試合に記者として潜り込んでいた連中には我が息子が何か土産を渡していますよきっと』
「……大司教様、良くお分かりになられましたね。記者は一度身体検査をしてからの入場でしたから、手帳と筆記用具にちょっとした仕掛けを。時間が経過したら全てが黒くなるのです。さあて、連中は記憶のみで記事を書けますかねえ?」
『優しいなあ千斎。僕なら記憶も消してるよ』
仲良しですね大司教様
あと、大司教様的には良いのかなこの会話。
念話だから良いのかな?
『大丈夫ですよー! 第三王子殿下、その会合が一段落されたらこちらにいらしてもらえないでしょうか? 聖魔法が使える人手が欲しくて!さすがに団長副団長の試合の後片付けは少々骨が折れます故』
『分かりました』
『助かります! 第二王子殿下にもお伝えしておきますので、宜しくお願い申し上げます!』
そうかあ、さすがに金紅さんアタカマさんの剣術試合だと、大司教百斎さんと最高の聖魔力保持者聖女候補セレンさんと全属性保持者であられて優美で真面目で素敵で大好きなナーハルテ様でもあっという間、とはいかないんだなあ。
『……最後のお一人だけ、長くはございませんか?』『ね』『うん』
すみません。黒白、ハイパー、リュックさん。
その通りだと思います。つい、ね。
『今は皆様の会話に集中願います』
寿右衛門さんの仰る通りです。
そう、集中、集中!
今度は、ついにセレンさんの婚約者候補の話になるのだからね!
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