283-聖魔法大武道場剣術試合第一試合の決着
金色の髪と
赤銅色の髪が揺れ、長剣が刺突を防ぐ。
残り時間は5分を切り、最高潮。
正に、一進一退。地上闘技場内は静まりかえっている。
……ガツ、ガツ、ガツン!
半獣人化したライオネアの細剣からの刺突とは思えぬ剛剣に、はっとした様に観客が再びの拍手を開始し、続いて声援が飛び交う。
それを長剣で鮮やかに防ぐスズオミの剣技にも、割れんばかりの拍手が。
「いいぞお!」「お二人とも、素敵!」
そんな声援が飛ぶが、互いが聞くのは互いの気配と息づかいのみ。
……そんな中で。
「ライオネア、今です!」「ライオネア様!」「スズオミ君、負けてないよ! いけえ!」
お互いしか見えていなかった二人が、その声援だけは聞き逃すまいとしたのが観客にも伝わった。
『『行け!』』
最も間近で二人を守る防具と化した魔石達にも励まされ。
二人は組み合いから
互いに振りかぶり、一閃を……決めた。
「……そこまでぇ! ……良く闘った! この聖魔法大導師が認める! 此度の試合、両者引き分け! 然しながら、両者勝利と判断し得るものであった! 良い試合だったぞ!」
本来ならば、長剣が有利な筈の打ち合い。
然しながら、ライオネアの細剣は長剣の柄に潜み、ぎりぎりながらスズオミの元まで届いていた。
また、スズオミの放つ長剣の一閃も、ライオネアの元に。
正に、寸分違わぬ正確さで引き分けていた。
……だが。
「「……たいへんな無礼と存じますが、引き分けではございません。勝者はおります」」
「このスズオミ・フォン・コッパー「ライオネア・フォン・ゴールドに存じます!」」
同時に剣を引いた二人が、同じく騎士団に準じた腰を綺麗に折る剣を下げた綺麗な礼で聖魔法大導師に異議を唱えた。
「「
顔を見合わせたその発言まで同じとあって、大導師は苦笑する。
そこに、大司教の熱い実況が飛ぶ。
「闘技場内の皆、聞いたかあ? 互いに互いを勝者とする厚い友情! もう一度、この二人に惜しみない拍手を! そうだ、皆も忘れているかと思うので確認だ! この友情に溢れる若者達は此度の試合にて清々しく婚約を解消した! 私の隣の両家の父君達も認めている! 今日この時からはこの若き両名は、何の
相も変わらぬ卓越した実況解説の大司教。
その隣に控えていた騎士団団長と副団長がその通りとばかりに立ち上がり首肯した為に闘技場内は多少のざわめきの後に……湧いた。
「……そうか、そう言えば。あのお二人、婚約者同士だったっけ……」「忘れてた! 試合が良すぎて!」「まあ、婚約解消おめでとう! それよりも良い試合をありがとう!」と。
前代未聞。
高位貴族令嬢と令息同士の婚約解消は剣術試合でその意志を測られた。その上で民衆に称えられ、聖魔法大武道場地上闘技場の第一試合は終了した。
鳴り止まぬ拍手。
方々から聞こえる歓声。
その内に、互いを勝者にと推していた元婚約者同士も聖魔法大導師に促され、両家の父に拍手を送られると、漸く、大観衆からの声援に応え始めたのだった。
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